覚醒剤がやめられない
新生活が落ち着くと、僕は以前と同じような、荒れた生活に戻ってしまいました。
悪い仲間とまた付き合いだし、免許がないのに不自由な身体で車を運転するようになりました。
そして僕はまた覚せい剤をやるようになりました。
覚せい剤を打つと、体の痛みが消えました。こわばった身体も動くし、ある程度、歩くことだってできました。
当時の僕にとって、覚せい剤は痛みをとって元気にしてくれる魔法の薬であり、どうしても手放せないものでした。
菊池さんたちは、僕がまた覚せい剤をやっていることを薄々わかっていたのではないかと思います。
生活を立て直すよう何度も言われましたし、真剣に怒られたこともあります。乗っていた車を菊池さんにレッカー移動されたこともありました。警察でもないのに、僕の留守中に家探しされたこともありました。
僕が出先から帰宅すると、ケアマネージャーがいて、「もう止めてください。みんなあなたのことが心配なんですよ」と涙ながらに訴えられたこともあります。
覚せい剤を辞めさせるために、精神科にも連れていかれました。
それでも本気で心配してくれる人がいる
僕のような人間のことを、本気で心配してくれる人がいる。
その事実はとてつもなく重く、今度こそ覚せい剤を止めて、生き直そうと思いました。
でも、覚せい剤を断ち切るのは簡単ではありませんでした。
僕には火傷による深刻な後遺症があって、何度も手術を受ける必要がありました。
火傷がもっとも酷かった頭部には、背中の皮膚を移植していました。そのため、背中にあった入れ墨が頭部へ移ってしまっていました。それらの入れ墨を除去するための手術、顔の整復手術――僕は何度も手術台に上がることになりました。
それらの手術のおかげで、僕の外見は徐々に整っていきました。
でも、痛みは相変わらずしつこく僕を苦しめました。
手術の傷跡が疼き、身体中が鈍い痛みに襲われ、眠れない夜が続きました。
そんな中、僕は処方された薬の副作用で歩けなくなってしまいます。
寸断なく襲ってくる痛みと、もう二度と歩けないかもしれないという絶望感……。
すると、悪魔の囁きが聞こえてきました。
――覚せい剤をやれば、痛みはなくなるぞ。