「僕は努力しない人は嫌いです」

「佐藤さん、僕は努力しない人は嫌いです。歩けるか、歩けないか。それは僕と佐藤さん、2人の努力次第です。僕も懸命に施術します。だから佐藤さんも努力しましょう」

 それから僕は車椅子に頼るのをやめました。

 歩けるところまでは自分の足で歩き、限界が来たら車椅子に乗る。そして疲れ切った筋肉を、鈴木さんにケアしてもらう。そんな毎日を繰り返しました。

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 鈴木さんは、なかなか厳しい人でした。僕が課題をひとつクリアすると、すぐに次の課題を与えてきます。

「佐藤さん、出かけたときに階段を見つけたら、なるべく上ってください。ただ、下りは、今の筋力だと負担が大きいので、エレベーターかエスカレーターを使ってくださいね」

 “階段を上る”という課題をもらってから数日後、僕は布施弁天に行きました。

 ヘルパーの三浦さんに車椅子を押してもらい、お寺へと続く参道を進みます。

 布施弁天に着くと、境内へ続く長くて急な石段がありました。

 僕は迷いませんでした。

 這いつくばり、手を汚しながら、一段一段、ゆっくりと登っていきました。

 僕は自分自身の足で、何としてもお参りがしたかったのです。

 参拝を終えると、ご住職の奥さんが石段を下りるのを介助してくださいました。

「がんばってくださいね」

 僕を気遣う奥さんの言葉に、僕の心はじんわりと温かくなりました。