書籍「僕が夫に出会うまで」
2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。
幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京、
文春オンラインでは中学時代まで(#1〜#9)と、
自分がゲイであることを認めた瞬間から,
物語の続きは、ぜひ書籍でお楽しみください。
僕は、カラオケ号泣事件後、二人から距離を置くようにしていた。三人でいると、自分がおかしくなってしまいそうだ。
僕と秀美が崖にぶら下がっている。崖から落ちたら死ぬ。
司はどっちか一人しか助けられない。
僕は司の友達として、「二人で幸せになれよ」とか言って、自ら落ちるべきなのかもしれないが、絶対嫌だ。足を使って、司の見えない所で、秀美を蹴り落としたい。
もし司が秀美を助けて、僕が崖から落ちることになっても、「幸せになれよ」なんて言わない。きっと僕は「二人とも、呪うからね」と言って落ちていくだろう。
日々、こんな妄想を膨らませていた、卒業間近のある日だった。
久しぶりに入った司の部屋で
「七崎、今日ヒマ? うちに遊びに来ない?」
司に声をかけられるのは久しぶりな気がした。
「ヒマだけど。秀美もいるの?」
僕は遠慮がちに聞いた。
「秀美は別の約束があって今日はだめなんだって」
秀美に断られたから僕を誘いにきたのは明白だが、嬉しい。
「そうなんだ。じゃあお邪魔する」
司の部屋に入るのも久しぶりだった。司の制服と同じ匂いがする部屋だ。司はブレザーを脱ぎ、ハンガーにかけた。司はいつもキチンとしている。本も、CDも、本棚にキッチリ収まっている。
僕は制服のまま、司のベッドに仰向けになって天井を眺めていた。するといきなり、司が僕にまたがり、覆いかぶさってきたのだ。