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順位戦C級2組、昇級レースを制した佐藤和俊六段は「年齢を言い訳にしたくなかった」

順位戦C級2組、昇級レースを制した佐藤和俊六段は「年齢を言い訳にしたくなかった」

参戦15期目、40代を迎えた棋士の思いとは――。

2019/03/11
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実績において現役プロの上位3分の1には入る

 棋士としての佐藤は順位戦では停滞したが、それほど負けていたわけではなく、むしろ勝ち組の側にいたというべきだろう。通算勝率は6割を超えており、将棋大賞の連勝賞も受賞している。全棋士参加棋戦の朝日杯オープンでは2年続けてベスト4入りの経験があり、同じく全棋士参加棋戦のNHK杯戦では2016年度に羽生善治らを破って決勝進出を果たした。決勝では佐藤康光に敗れたが、準優勝は堂々たる成績だ。

共同インタビューを受ける佐藤六段

 現在の現役棋士は165名(19年3月9日時点)いるが、その中でタイトル戦番勝負あるいは全棋士参加棋戦決勝戦の経験があるのは50数名。これを多いとみるか少ないとみるかは議論の余地があるだろうが、単純に考えれば、佐藤は実績において現役プロの上位3分の1には入ると言える。

 だが順位戦でのクラス分けからすると、下位の5分の1ということになる。佐藤は長いC級2組生活について「後輩に抜かれることの焦りはなかったが、自身が上がれないだろうという諦めはあった」と振り返っている。

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「振り飛車はまだまだやれる」

 では今期の佐藤はなぜ上がれたのだろうか。「ここ数年は以前と比較して調子がよくなっていた。結果も出たのでまだまだやれるとは思い、チャンスという意識はあった」という。そして「年齢を言い訳にするのはまだ早いと思った」と続けた。

 昇級を決めてのインタビューでは「長くやってきて、初めて結果が出てうれしい。この歳になって上がれたことは誇りに思う」と語り、最後の一局については「これほどプレッシャーがかかる将棋を指したのは久しぶり。大げさかもしれないが、三段リーグ以来かもしれない」という。

弟弟子の遠山雄亮六段(右)とともに対局を振り返る

 佐藤は最近のプロ棋界では苦戦を強いられている振り飛車党だ。「振り飛車が苦しんでいるのは事実だが、個人的にはまだまだやれると思っている。今期は作戦が固まりがちだったので、来期は新しい指し方を模索していきたい」と語る。年齢を言い訳にせず、新たなチャレンジを目指すことが棋士としての向上につながるのだ。

 筆者が「16年前とどちらがうれしい?」と尋ねると、少考したのちに「同じくらいですかね」と。そこには四段昇段を果たした時と変わらない佐藤の笑顔があった。

写真=相崎修司

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