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観光列車の成功パターンになった

 JR東日本としては「リゾートしらかみ」の成功パターンを「きらきらうえつ」で展開しようと考えただろう。その目論見は成功し「きらきらうえつ」は定着。そして、新型車両「海里」の導入につながった。「きらきらうえつ」はなくなるけれども、この列車がなければ「海里」は誕生しなかった。JR東日本は五能線に続き、羽越本線でも出世列車を誕生させたことになる。

 10月から走り始める「海里」はサービス内容も出世した。新型車両4両編成のうち、1号車は2+2列のリクライニングシート。2号車は4人掛けコンパートメント8区画、3号車は売店とイベントスペース、そして4号車はダイニングカーでテーブル付き24席だ。ダイニングカーは食事付きの旅行商品専用となった。下り列車は新潟の料亭が和食を提供し、上り列車は山形県のイタリアンレストランが洋食を提供するほか、鶴岡駅で専用待合室を用意して、スイーツやドリンクを提供する。料金は新潟~酒田間で大人1名13,800円だ。

「夕日」と「新雪」のダイナミックな融合をグラデーションで表現した「海里」の外観デザイン
「海里」の2号車は、全席4人掛けのコンパートメントシートの車両

 いきなりランクアップでビックリするけれど、1号車と2号車は従来通り、乗車券と指定席券で乗れる。ただし指定券は520円から820円(10月までの予約購入、10月以降の購入は840円)と若干の値上げとなる。差額以上に設備が良くなるから、これでも割安。この設備ならグリーン車扱いでもいいくらいだ。

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 運行時刻は「きらきらうえつ」を踏襲しつつ、所要時間を若干長く取った。笹川流れと呼ばれる絶景ポイントを徐行するほか、下りは桑川駅とあつみ温泉駅、上りは鶴岡駅と桑川駅で長めに停車する。「きらきらうえつ」では時期によって桑川駅の停車時間を多めにとっていた。とくに10月は、桑川駅そばの海岸から日本海の日没を眺める「夕日ダイヤ」が人気だった。観光列車は「長く停車する」こともサービスになる。

 
 

「きらきらうえつ」は電車の改造だったけれども、「海里」はハイブリッド気動車だ。電化区間にとらわれず運行できる。村上から米坂線に入って小国や米沢へ、あるいは余目から陸羽西線に入って新庄へ、という特別運行も可能だ。そうなると、上越新幹線~海里~山形新幹線という回遊ルートができる。

「きらきらうえつ」の余生は……

「きらきらうえつ」の車両は、定期列車からの勇退後も臨時列車として運行する。

・10月12~14日 快速「谷川岳紅葉号」新潟~水上
・10月25~27日 快速「きらきら日本海」秋田~新潟
・11月3~4日 快速「弥彦浪漫」新潟~弥彦
・11月9~10日 快速「越後紅葉ライトアップ号」新潟~柏崎
・11月16~17日 きらきらぐるっと右回り & きらきらえちご 新潟~柏崎
・11月23~24日 きらきらえちご & きらきらぐるっと右回り 新潟~柏崎
・11月30日 きらきらしんえつ 新潟~直江津(信越本線経由)

 12月も臨時列車があるかもしれないけれど、いずれ「きらきらうえつ」の車両は廃車になる見込みだ。列車の引退、廃車は寂しいけれど、車両の寿命だから仕方がない。

 

「きらきら日本海」は「きらきらうえつ」ルートでもあり、定期列車版「きらきらうえつ」のラストランとも言える。これ以外の臨時運行が好評だった場合、その区間に新たな定期観光列車が生まれるかもしれない。「きらきらうえつ」は最後の日まで、観光列車の開拓者として走り続ける。

写真=杉山秀樹/文藝春秋