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新幹線+観光列車ルートとして誕生

 羽越本線の村上~鶴岡間の海沿いは海岸線の表情が豊かで、旅人を飽きさせない景色だ。奇岩が次々と現れ、砂浜もあるし漁港もある。同じ区間でも真昼と夕刻では印象が異なる。下り列車の車窓は明るい時間帯だから、煌めく青い海をずっと眺められる。上り列車の車窓は日本海に沈む夕日がハイライト。しかし、日没後の車窓は真っ暗。どちらがいいか悩むけれど、そんなときは両方乗ろう、つまり往復すればいい。

 ちなみに、東京駅7時48分発の上越新幹線Maxとき305号に乗れば、新潟駅に9時56分着で、下り「きらきらうえつ」に乗り継げる。上り「きらきらうえつ」で新潟駅に着くと、新潟駅18時56分発の上越新幹線「とき344号」で東京着は21時ちょうど。つまり日帰りも可能。もっとも、日帰り強行軍なんて野暮だ。新潟や酒田、あつみ温泉をはじめ、「きらきらうえつ」沿線の町に1泊したい。

 

「きらきらうえつ」は、沿線自治体にとっても、JR東日本にとっても重要な観光列車だった。きっかけは2000年に結成された「羽越本線沿線観光振興連絡協議会」だ。この年の夏、JRグループが四季に合わせて開催する「デスティネーションキャンペーン」が山形で展開された。翌2001年の秋には新潟で開催される。そこで、山形と新潟を結ぶ羽越本線の観光列車が計画された。

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 JR東日本にとって、新潟発着の着地型観光列車は重要だ。首都圏から新潟へ、上越新幹線の誘客につながるからだ。1999年には山形新幹線が新庄へ延伸している。きらきらうえつに往復乗車してもらうだけではなく、上越新幹線~きらきらうえつ~陸羽西線~山形新幹線という回遊ルートも視野に入る。

 

出世魚のような展開を見せた「リゾートしらかみ」

 JR東日本にとって、「新幹線+観光列車回遊ルート」は2例目だった。初の事例は五能線の観光列車「リゾートしらかみ」だ。秋田と青森を日本海沿岸の五能線経由で結ぶ。五能線は国鉄時代から鉄道旅行ファンに人気があり、JR東日本は1990年からトロッコ列車「ノスタルジックビュートレイン」を運行していた。その実績を踏まえ、秋田新幹線の開業に合わせて、1997年にキハ40系気動車を改造した「リゾートしらかみ」にリニューアルした。

「リゾートしらかみ」は大好評となり、3編成が作られた。そして2010年、東北新幹線の青森開業を機に、ハイブリッドシステムを搭載した新型車両が投入される。これで、秋田新幹線~リゾートしらかみ~東北新幹線という回遊ルートが完成する。五能線の観光列車は、旧型客車改造トロッコ、気動車改造、そして新型車両投入と、出世魚のような展開を見せた。

 余談ながら「新幹線+観光列車」の成功は、2004年の九州新幹線部分開業時の「いさぶろう・しんぺい(熊本~吉松)」リニューアルや「はやとの風(吉松~鹿児島中央)」の誕生に影響したと思われる。