1ページ目から読む
5/6ページ目

(3)の「群衆」とは、なんとなくデモに親和的で、警察が嫌いな庶民です。騒ぎがあると野次馬として集まり、「ロンドン橋落ちる」の替え歌などで警察を煽り、催涙弾を撃たれるとワラワラ逃げる。彼らは服装も整っていなければマスクすらしていないことも多く、まさに「群衆」という感じですが、各地の現場には数千人単位で存在することもあります。

 ややガラの悪い繁華街である旺角や、古い住民が多い北角や黄大仙、郊外などで多く見られます。一部は、警察が嫌いな地元住民たちが「うちの街に入るな」といった動機で、正規のデモ隊と共闘する例もあります。

9月15日の夜、下町地区の北角で警官隊を煽っている地元の「群衆」。マスクと黒シャツという、デモ参加者の格好をしていない人が多い。その後、彼らにも催涙弾が打ち込まれた ©安田峰俊

Q5. デモ隊に中国のスパイは入っている?

――暴力行為をおこなうデモ隊は香港警察や中国のスパイである、といった話もよく聞きますが?

ADVERTISEMENT

A5. もちろん、デモ隊の大群衆には間違いなくスパイが紛れ込んでいます。警察のスパイ行為はすでに複数がバレていますし、中国の情報機関などが送り込んでいるスパイも絶対にいる。ただ、これらのスパイたちがデモ隊の暴力行為を先導しているかといえば、こちらは考えにくいと思います。

 上述のように、破壊行為をおこなう部隊はかなり統制された動きを見せています。この記事の哨兵部隊はスパイの排除にかなり注意しており、おそらく遊撃部隊も同様のチェックをしていると思われますから、暴力行動を積極的に煽れるレベルまで警察のスパイが多く浸透していることはまずないと思います。

 下に紹介する動画は私が撮影したもので、9月8日にセントラル駅の出入口を破壊する遊撃部隊の様子です。破壊用の鉄パイプなどを準備し、ガラスのどこを突いて壊すかも事前に情報共有しているかに見える。数人〜10人ほどのチームで分散して、同時に10ヶ所くらいの駅の出入口を一瞬で破壊しているわけです。周囲のデモ隊もまったく止める様子がなく、これはデモ隊側の人間の行為です。

 

 また、隊列からはぐれた警官やデモに抗議する一般人へのリンチや、破壊行為に対しては、周囲のデモ参加者が傘をさして現場を囲み、悪行がメディアに撮られないように協力しています。暴徒的な行為をおこなう人たちと他の参加者は、普通に香港式の広東語で会話しており、明らかに味方同士です。中国からのスパイが入っていることもまずないと見ていいでしょう。

――でも、日本側では「スパイ説」がかなり広がっているようですが。