作家になって13年、いま考えていること
――こうして作品を振り返ってみると、デビューの時から中島さんの好きなものは変わっていないなと改めて感じます。
中島 そうですね。なんとなく、ああこれは中島京子の小説か、と思ってもらえるような感じになってきたかな。最初の頃は「いろんなものを書きすぎて、イメージがまとまらない」みたいなことも言われていて、それは自分の力量もはっきりしないところもあったのかもしれませんが、こうして書いたものが溜まってきたので、その中で共通のものというのが見えてくる部分もあるかなと思います。
――今後はどういうものを書く予定ですか。
中島 とりあえずは『小説トリッパー』で連載を始めるんです。内容を説明するのが難しいんですけれど、関心があるのは戦後すぐくらいの時代なので、その要素が入ってくるはずですが、まだ書き方を悩んでいる状態です。でも『小さいおうち』みたいなものにはならないし、『女中譚』みたいなものにもならないんだろうな、という。新年号くらいから連載が始まると思います。
他には、『婦人公論』に連載していた小説が終わったので、それをまとめたものが来年の春くらいに出るのかな。これは主婦の話です。伊藤整が60年前に『婦人公論』に連載していた『女性に関する十二章』という、ベストセラーになったエッセイがあるんです。その章立てが「恋について」とか「家庭について」とかいった、今でも『婦人公論』の柱になっていそうなもので12章作ってあって結構笑えたので(笑)、その章立てに沿って書いています。わりとコメディっぽい軽めのもので、現代のリアリズムの小説です。それが出たら、その次の刊行までは間が空きます。
――考えてみたら、ここ最近立て続けに受賞があったということは、立て続けに本を刊行されていたということですね。
中島 そうなんです。一昨年、去年は刊行が重なったので、なんだかすごく多作な人みたいになっていましたけれど、まあそういう年もあるという感じで。
――そういえばかなり前に、毎回作品ごとに課題を設けているとうかがいましたが、最近はどうだったのでしょう。今後はどんな課題を考えていますか。
中島 以前は毎回新しいことをやろうとしていましたが、今、作家になって13年で、ある程度一巡したというか。10年を越えて、それこそ歴史小説を書いてみたりもしたし。あまり新しい課題にはこだわらないようにしようと思っているんです。結局、何かやろうとすると、乗り越えなきゃいけない壁があることに気付きますから。
たとえば『かたづの!』は、歴史小説というものを自分はどう書けるのかという問題に直面したし、『長いお別れ』では身内のことを題材にする時、自分はどういうスタンスを取れば書けるのか考えなくてはならなかったんです。そんなふうに「これです、今回のハードルは」みたいに、いつも何かが立ち上がってくる。今後もいろんなハードルがあるんだろうな、と思っています。