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連載昭和の35大事件

占領下の日本で大蔵大臣セクハラ事件に「キスの一つや二つ」――批判は被害女性議員に向けられた

とにかく「自己主張する女性」に厳しかった時代

2019/11/17

source : 文藝春秋 増刊号 昭和の35大事件

genre : ニュース, 社会, 歴史, メディア, 政治

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「5升はペロリ」の酒豪が“前後不覚になるまで”泥酔

 考えると、事件には不可解な点もある。週刊東京1957年1月19日号は、「あなたと“お酒”」について著名人に聞いているが、その中で泉山は「いままでの最高量は?」という質問に「5升はペロリ。家での晩酌は1升」と答えている。そんな酒豪が、蔵相として迎えた初の国会審議で疲労と緊張が蓄積していたとはいえ、言われているような酒の量で前後不覚になるまで泥酔するものだろうか。

「事件」後も酒の話題でよくメディアに登場した(雑誌「富士」より)

「酒気を帯びて議場に入ること」が禁止に

「トラ大臣になるまで」には、国会内医務室で医師の診断を受けた際のことを書いている。「その医長さんが注射の折、私の目を見て驚いた。――瞳孔が開いていたとのこと」。「これが大問題となって、後に司直の手がのびることになったのも、このためであった」とも書いているが、そんなことが実際にあったのかどうか。泥酔まで謀略とするのは難しいだろう。

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 この事件で国会は、酒気を帯びて議場に入ることを禁止する決議をした。しかし、2005年6月18日付朝日朝刊には、「『酒気帯び議員は退場を』」の見出しで、自民党の一部議員が酒気を帯びて衆院本会議場に入ったとして、民主(当時)、社民両党の議員が会期延長の議決投票を一時拒否したという記事が載っている。実際にいまもそうした例があるのだろうか。