「近藤君は本当にビッグマウスだね」と言われたことも
――これまでのインタビューでは「20代のうちにA級」が目標とおっしゃっています。23歳でB級1組に上がったので、この目標を上方修正してもいいように思います。ご本人としてはどうなのでしょうか。
近藤 さすがにB1は強い方が多く、1期抜けとは言えません。早くA級に上がれたらいいけれど、目標設定は変わらずです。
――謙虚ですね。あまり大きな目標は口にしないですか?
近藤 そんなことはなくて、以前はビッグマウスでした。C2に初参加したときは順位も下なのに上がる気満々で「頭一つ違う」なんて言っていました。梶浦さん(宏孝五段)と仲が良く、その師匠の鈴木大介先生(九段)にも研究会や食事に連れて行っていただいたり、お世話になっています。鈴木先生に「近藤君は本当にビッグマウスだね」と言われたこともあります。奨励会時代は、プロでもないのに「この将棋はプロ的には大差ですね」なんて言って、周りにあきれられていました(笑)。
最近は落ち着いてきたとか大人になったとか言われます。クラスも上がったので……。
師匠は自由にのびのびというような方針
――失礼ながら、大人になったという評判は聞いたことがあります(笑)。スピーチや挨拶もしっかりされている。でも、棋士は企業のように新人研修はないですよね。どのように大人の振る舞いを身に付けたのでしょうか。
近藤 スピーチはプロになったとたん機会が増えました。もちろん事前にシミュレーションして、内容を頭にしっかり入れてから話します。師匠(所司和晴七段)は自由にのびのびというような方針で、うるさく言われたりはしませんし、特に誰に教わったということはありません。社会人として最低限のことはできないといけないと自覚した感じです。
――すっかり板についているように感じます。では、子どもの頃のことを教えてください。最初に将棋を教えてくれたのはおじい様と聞きました。
近藤 そうですね。5歳の時に近所に住む祖父が、はさみ将棋から教えてくれました。はさみ将棋で勝つようになり、本将棋も指すようになって将棋の楽しさにハマっていきました。祖父はアマチュア初段くらいです。
――おじい様に教わるだけでなく、将棋教室にも通ったのでしょうか?
近藤 ちょうど近所の公共施設で将棋教室をやっていて、そこで普及指導員の先生に教えてもらいました。小学生になってから、その指導員の方に所司先生の道場を紹介してもらい、そこにも行くようになりました。それより近い、家から3駅の別の道場も紹介してもらい、平日も1人で通うようになりました。道場に行くのが楽しみで、学校から帰ったらすぐ道場に行けるように玄関にカバンを置いていました。