「過去最高って言ってもいいのかもしれないですね。数年前なら誰が出ても優勝していたんじゃないか、というレベルの高さでした」
大会の締めに審査員のダウンタウン松本人志がこう語るほど、2019年のM-1は沸いた。では何がこの“神回”を作ったのか。出場した漫才師たちのインタビューから、その答えに迫っていく。
史上最高の681点――ミルクボーイの漫才に会場が揺れた直後、8番目に出てきたのがオズワルドだった。「ミルクボーイさんがめちゃめちゃ関西の感じだったので、僕らはめちゃめちゃ東京の感じでやりました」とネタ後に語っていた2人。
大爆笑のあとの“焼け野原”で戦ったオズワルドが空気を変えるために意識した“戦略”とは?(全3回の1回目/#2、#3へ)
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ミルクボーイの直後「イラっとされるくらいゆっくり歩いた」
――ミルクボーイが史上最高得点を出した後、8番目の登場で、階段をゆっくり歩いて降りて来たのが印象的でした。M-1において、あんなにゆっくり登場したコンビはいないのではないでしょうか。
伊藤 一度、仕切り直さなければいけないので。お客さんに「ん? なんか出て来たぞ」って、思ってもらわないとダメじゃないですか。
――でも、普通は、勢いよく出ていきたくなりそうなものですけど。
畠中 もともと勢いがあるタイプじゃないですし、しゃべるテンポとかを考えたら、ゆっくりの方が合ってるんです。
伊藤 ちょっとイラッとされるくらいゆっくり歩きました。予選でトム・ブラウンさんの後で出たときも、超ゆっくり歩きましたね。
――準々決勝、準決勝とトム・ブラウンの後だったんですよね。そういうのは事前に2人で打ち合わせをしているものなのですか?
伊藤 ウケ具合を見て、ですね。トム・ブラウンさんもめちゃくちゃウケてましたから。流れを変えるには極端なことをしないとダメだと思うんです。
“史上もっとも荒れ果てた場”での漫才
――なるほど。大爆笑をさらった後の状態を「焼け野原」みたいな言い方をします。そういう意味では、史上もっとも荒れ果てた場で漫才を披露しなければならなくなったコンビということにもなります。
伊藤 やっぱり準々、準決で、トム・ブラウンさんはいちばんと言っていいくらいにウケていたんです。だから慣れもありました。
――3回戦はぺこぱの後でしたが、ぺこぱも相当ウケていたんですよね。