昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載昭和事件史

「自分はそんなに多くの女を相手にしていたんですね」“昭和のドンファン”福田蘭童結婚詐欺事件とは

父は天才画家、息子はクレイジー・キャッツ…福田蘭童結婚詐欺事件 #1

2020/10/11

genre : ライフ, 歴史, 社会

「尺八界の鬼才とまでいわれた福田蘭童(33)も過日、警視庁のマージャン賭博大検挙の際、挙げられてからいまなお帰されず、それどころか、彼の凄腕にかかった数々の女性らの申し立てによって、蘭堂は結婚詐欺罪で送局されることになった。彼の毒牙にかかり自殺を企てた本郷区湯島切通坂10、カフエー「パウリスタ」の娘、梶原富士子(22)や、神田に家具商を営む資産家の未亡人、佐久間とし(40)=仮名=2人は被害者として一両日前、警視庁で事情を聴取され、また蘭童と婚約の間柄にある川崎市大師町1505、松竹蒲田女優・川崎弘子こと石渡静子(24)も20日、警視庁で蘭童との関係を調べられた。その大部にわたる聴取書には福田蘭童のあくなき行状が盛られ、尺八界の鬼才もついに『希代の色魔』に転落。その驚くべき乱行が暴露された」

 以下、手口が詳しく書かれている。要約してみよう。

「凄腕」「愛欲地獄」「エロ詐術」その手口とは

 梶原富士子の申し立てによると、蘭童は1932年3月からパウリスタに通い始めたが、尺八の大家であることに憧れ、信用した富士子とその母親に取り入り、たちまちの間に、富士子を中野区の自宅に誘い出す関係になった。

©iStock.com

 富士子に結婚の意思があると見てとるや、金を目当てに奥の手を出し、富士子の母が自宅を訪ねた際、家財が差し押さえにあっているのにぶつかったのを幸い、同情を求めて「作曲が売れたら返済するから」と300円(2017年換算約64万円)を借り受け、その後も言葉巧みにいろんな事情を訴えて金を引き出し、目黒ホテルの宿泊代も支払わせた。

 同年11月、富士子宅近くに一戸を借り、富士子と同棲したが、間もなく母に870円(同約187万円)を出させてピアノを買い入れた。それも楽器店と示し合わせて口銭(仲介料)を取るのが目的だった。

 その間も蘭童の行動が落ち着かないのに不安になった富士子が入籍手続きを迫ると「2万円なければ入籍できない」と言って取り合わなかった。実はこのころ、蘭童は資産30万円(同約6億4000万円)を持つ佐久間としの財産に目をつけ、としとも関係。2人の女性を操っていた。