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“顧客目線”時代にマーケッターが一番やってはいけないこととは?

「競争戦略×クリエイティブ」が最強の武器になる その2

source : ライフスタイル出版

genre : ビジネス, 働き方, 企業, テクノロジー, 経済, 読書

アップル、ユニクロに見る「単なる機能進化」

 ここで多くの企業にとっての課題となるのが、かつて素晴らしいイノベーションなりアイデアで良い商品を出しても、時間とともに単なる機能進化の方向に転換しがちだということ。たとえばアップルはクリエイティブの権化みたいな会社でiPhoneはすごい商品ですが、最近はより写真がきれいになったとか、ボディが薄くなったとか、機能のマイナーなアップデートばかりで、かつてのクリエイティビティは薄くなっている。これはある意味宿命ではあるのですが。

 

 あるいはユニクロなら、最初にヒートテックが出たときのインパクトはインナーウェアの再定義だった。しっかり詰めた火薬が爆発した。非常に大きな商売になって人々の生活を豊かにしたのですが、その次の展開となると、「極暖ヒートテック」「超極暖」というように、機能向上路線になっていく。これは商売としては正しいのですが、おそらく「超極暖」の次はない。改めて新機軸を打ち出すことが必要になります。

三浦 ホントは着脱式のヒートテックがあるといいんですけどね。テクノロジーの進化でヒートテックはどんどん温かくなっていてすごいんですが、明確な課題がひとつあって、室内ではめちゃくちゃ脱ぎたくなる(笑)。

 

「ワクワクするかどうか」を問い直す

 本質的な課題をおいて、技術の進化ばかり追求しても本当にユーザーが興奮したりワクワクするようなものにはなりません。ものの価値を再定義するうえで、よく投資先のスタートアップやクライアントさんに対して、「そのイノベーションが便利なのはわかるんですけど、グッときますか?」と問いかけています。便利、お得だけでなく、「ユーザーにとってワクワクするか」はきちんと問い直したほうがいい。

 便利、お得は最終的に差別化競争、スペック競争になりがちです。とにかく薄く、軽く、丈夫に、安く。こればかりやっていると作り手はどんどんしんどくなります。それよりは「なんかワクワクするね」というものを作ったほうが結果的に市場で長続きするし、競争力としてのコスパもいい。

 僕自身、仕事をしていくなかで、そもそもこれは何のためのイノベーションなのかと常に考えています。200メートル防水の時計をつくるような仕事をしても、地球上の誰も必要としないですから。

楠木 放っておくと、どうしても人や企業はスペック競争に陥りがちです。それはあっさり言えば企業という生き物の本能ですから。だからこそ一歩引いて本当にそれが必要なのか俯瞰して、グッとくるのかを誰かが問わないといけないですね。

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