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ユーザーの視点で“迎えに行く”

楠木 もう一つ面白かった三浦さんの対概念は、アイデアの選択肢は「絞る」のではなく「ユーザーの視点で迎えに行く」という話。〈日本の目にかつてない自由を与えるコンタクトレンズ〉もユーザー視点で「迎えに行った」例ですよね。

 

三浦 はい。技術者は、自分の技術をどんな形で使うかたくさんの可能性が思い浮かびますし、僕らクリエーターもカッコいいコピーや企画は無限に思いつきます。「御社の商品を使ったらこんな面白いことできます、こんないいCM作れますよ」ってどんどん思考がクライアント寄りになってしまいがち。

 だからどこかのタイミングで1度ユーザーの視点になって、今まで考えてきたクライアント側の都合を一切忘れて、「僕が見たい映像ってなんだろう、僕だったら何をしてくれたらうれしいだろう」って考えるんです。

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 クライアント以上にブランドのことを考えて企画の可能性がどんどん広がった先に、最後、ユーザーの気持ちに立ち返ったとき、たった1つか2つ確かにこれは欲しいものを「迎えに行く」というアプローチです。

仮説なしにユーザーの意見を聞いてもダメ

楠木 これにしても、最初は徹底的に発想を出してそのあとでユーザーの視点に大きく振って迎えに行く、という順番が大切なんでしょうね。

三浦 おっしゃる通りです。最初からユーザー視点になって考えても、ほとんどがすでにあったものや、既存のマーケットで使い古されたものになってしまう。いったんはテクノロジーの可能性やクライアントの利益を考えて最大限広げることが重要です。できることは無限にありますが、そこから本当にユーザーに必要とされる課題を見つけ、迎えに行くんです。

 だから逆にいうと、仮説なしにユーザーのインタビューをするってマーケッターが一番やってはいけない、愚かなことなんですね。

 

楠木 よく「顧客目線で考えろ」とか「ユーザーの立場に立て」とか言うけど、基点にあるべきコンセプトを抜きにしてユーザーに「何が欲しいか」聞いても、「薄くしろ」とか「軽くしろ」とか、ごく当たり前の要望しか出てこないですからね。