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楠木 こういう問題には、それこそクリエイティブがオルタナティブを示す必要がある。たとえば7000万人の日本――これは戦争が終わった1945年当時の日本の人口ですが、7000万人の日本でも絶対にポジティブな未来を描けるはずなんです。それが政治リーダーの役割だと言ってもいい。それが証拠に、少し前まで、人口さえ減ればもっといい国になると言い続けていたんですから。

三浦 人口減少社会は逆にいうと、ひとり当たりの国土や資本が最大限豊かになる時代ですから、そのとき生きてる人間にとって可能性に満ちた時代であることを再定義することは可能だと思います。ここ最近の世の中をいったん冷静になって、過去からの時間軸の流れのなかで見ると、いろいろな物事が非常にクリアに見えてきますね。

歴史的な事実の文脈の豊かさに学べ

楠木 そうなんです。だからファクトフルネスに引っ掛けて“パストフルネス”。過去の歴史的な事実の文脈の豊かさに学ぶべきだというのが私の提案です。必要なのは古新聞・古雑誌だけ。いままでは無価値と思われてたもののなかに、すごく豊かな学びが蓄積されてる。しかも実に低コスト。『逆・タイムマシン経営論』は僕なりに思考様式のオルタナティブを提示したつもりです。

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三浦 僕は「答え合わせはまだ先」っていう言い方をよくしてきたんですが、『逆・タイムマシン経営論』を読んでハッとしたんです。確かに未来においてどういう変化が起きるか答えはまだわからない。でも、答え合わせが行なわれた過去問は世の中にたくさんある、それをきちんと学ぶことが未来に対してまだ発見されてない何かを見つけるうえですごく重要なんだと。今日は刺激的なお話を本当にありがとうございました。

楠木 こちらこそ大変勉強になりました。ありがとうございました。

写真=文藝春秋/松本輝一

◆三浦崇宏さんの発言に一部事実誤認がありましたので、修正をいたしました。関係者の方々と読者のみなさまにお詫び申し上げます。(2021.1.19  16:28)

三浦崇宏(みうら・たかひろ)
​1983年、東京都生まれ。The Breakthrough Company GO代表、PR/クリエイティブディレクター。博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年に独立。「社会の変化と挑戦」にコミットすることをテーマにThe Breakthrough Company GOを設立。ケンドリック・ラマーの国会議事堂前駅「黒塗り広告」、国内外で8つの賞を受賞した「WEARABLE ONE OK ROCK」など、従来の広告やプロモーションの枠を超えたクリエイションが大きな注目を集める。日本PR大賞、カンヌライオンズPR部門ブロンズ・ヘルスケアPR部門ゴールド・プロダクトデザイン部門ブロンズ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSイノベーション部門グランプリ/総務大臣賞など受賞多数。著書に『言語化力』などがある。

楠木 建(くすのき・けん)一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(ICS)教授。1964年、東京都生まれ。89年、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授、同大イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専門は競争戦略。『ストーリーとしての競争戦略』が25万部超のベストセラーとなる。著書に『逆・タイムマシン経営論』(杉浦泰氏との共著)の他、『「好き嫌い」と経営』『戦略読書日記』などがある。