藤井聡太二冠、誕生。

 2020年の将棋界は……いや日本全土が、この偉業に打ち震えました。

 藤井フィーバーはとどまるところを知らず、スポーツ雑誌である『Number』が初の将棋特集号を発行して出版不況を吹き飛ばす20万部を売り上げ、盤駒は生産が追いつかず、さらに将棋どころか囲碁のゲームソフトまで売れる【※】という事態を巻き起こしました。

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※人間にうまく負けるためのゲームAIはいかに開発されているのか。将棋、囲碁、麻雀などの定番系ゲームを手掛ける開発会社に聞いてみた

 棋聖、王位と立て続けにタイトルを取った藤井二冠の次の標的は、前期も挑戦者決定戦まで進んで挑戦まであと一歩だった王将戦。
 将棋界最難関といわれる王将リーグといえども、今の藤井二冠を止める者は誰もいない……そんな予想はしかし、意外すぎる形で裏切られます。

 何と……トップ棋士が立て続けに、藤井二冠に対して振り飛車をぶつけ始めたのです!

 しかもそれは、普段はあまり振り飛車を指さない、居飛車党の棋士たちでした。
 結果的に、藤井二冠は王将戦の挑戦権を逃すどころか、リーグからも陥落……。

 もともと将棋ソフトは振り飛車を『不利な戦法』と考えており、ソフトを研究に用いる藤井二冠はデビューから一度も振り飛車を採用していません。
 そして藤井二冠以外のトップ棋士たちも、ソフトを使用して研究しているはず。
 それなのにどうして、不利なはずの振り飛車を敢えて使い、しかも居飛車では止めることができなかった藤井二冠を倒すことができたのでしょう?

 同じ頃、将棋ソフトの世界でも衝撃の発表がありました。
 藤井二冠も使用していると公言する最強のソフト『水匠』(すいしょう)の開発者である杉村達也さんと、その水匠の探索部分を開発した『やねうら王』の磯崎元洋さんがタッグを組んで、将棋ソフトの新たな大会『電竜戦』に出場するというのです!
 
 その名も『みずうら王withお多福ラボ』(以下、みずうら王)。