杉村:
相居飛車の場合は、固めないほうが勝ちやすいというふうに勉強したんだなぁと。相当、受けの棋風になりました。固めて受けるというよりは、相手の駒を根絶やしにするという感じで。
──恐ろしいですね…………あっ! 磯崎さん、図を書いてくださったんですか!?
磯崎:
ここの入力に何を与えるかで、工夫のしようがある。またはここの構成(アーキテクチャ)を変更するところでも、工夫のしようがあると。
ところがアーキテクチャを変えてもなかなか強くならないし、変えた場合は全くのゼロからまた学習をさせなくてはいけないんです。その計算資源のコストがバカにならなくて、誰もやらないんですよね(笑)。
結局、たぬきさん【※】が最初に公開した学習済みの標準NNUEに追加で学習させて強くするのをみんなやってて。だからアーキテクチャ変えてるチームって、ほとんどないんです。私とたぬきさんが何個かやってたくらいで。
※T.N.K.(たぬき)チームのメインの開発者。
杉村:
私もやったんですけど、教師局面が少なかったのか、強くならなかったので……追加学習しかないなと。
磯崎:
アーキテクチャを変更するのって、なかなかハードルが高い。そこで、入力するものを変えようと。特徴量っていうんですけど。
今回のHalfKPE9というのは、Kが王様(キング)で、Pが他の駒で、Eが利き(エフェクト)。そして9は3×3の組み合わせで……将棋は1つのマスに、桂馬もあるので最大で10個の利きが集まることがあるんです。
──自分の駒の利きと、敵の駒の利きを組み合わせると、膨大な数になってしまいますね。
磯崎:
けど、利きって普通は3つも集まらないじゃないですか。
──確かに。むしろ駒が利きすぎてる状態は、効率が悪くて悪手の可能性が高そうです。
磯崎:
だから、味方の利きが、0か1か2以上かの3通りでやろうと。そして相手の利きも同じく3通りで表現して……。