──3×3で9なんですね! なるほど。
磯崎:
ただ、駒が無い場所の利きも大きな意味があったりするじゃないですか?
──角の利きとか、飛車の横利きみたいな?
磯崎:
本当はそういう部分もやりたいんですけど、計算量が増えちゃうんで……なかなか強くならないですよね。
──標準NNUEを使って、学習させるものを絞る水匠のようなアプローチがある一方、NNUEそのものを変えていくアプローチもあると。その2つのNNUEがぶつかり合ったのが、今回の電竜戦なわけですね!
ソフトの評価値は信用できない?
──みずうら王というのは、磯崎さんと杉村さんの、いいところを合体させたわけですよね? いったいどのくらい強くなったんでしょうか?
磯崎:
そうですね。NNUE評価関数の中では、杉村さんの水匠が一番強いとされています。探索部分も……やねうら王のソースコード(プログラム)は公開はしていますが、開発版とは差があるんです。だから公開しているものよりは、若干強いものを使ったんです。
──将棋ソフトを強くするには、評価関数の他に、この探索部分を改良すればいいんですね?
磯崎:
評価関数は、大局観に当たる部分です。局面の評価を数字で示してくれる。一方、どこの局面を優先して読むかとか、どの順番で読むべきかを選んでくれるのが探索部分です。
やねうら王は探索部分のメインなので、そこを強くすれば、評価関数は同じでも強くなったりするんです。
──探索部分については、やねうら王以外のものは今も存在するんですか?
磯崎:
ディープラーニング系を除けば、やねうら王一択になっています。昔はいっぱいいたんです。でも、やねうら王に……。
──勝てない?
磯崎:
細かいチューニングの差もありますが……指し手生成のプログラムで、やねうら王よりも速いのってなかなか書けないんです。そういう部分で差が付いてしまう。同じ評価関数を使っても、やねうら王に勝てない。そうすると、やねうら王に勝てないソフトのソースコードを公開しても……。