──まるで職人技のような……。
杉村:
棋士の先生もそうやっていらっしゃる方はいるんじゃないですかね。『2番目の手で進めて行ったらこうなったから、やっぱり1番目の手がいいんだな』と調べていって、それを手入力で定跡を作っていくという方法は。
──その手法は私もプロの方から聞いたことがあります。
杉村:
BURNING BRIDGESさん、強かったですからね。悪い定跡は入っていなかったみたいですし。だからその方法でも強くなります。大変ではありますが……。
──言い方は悪いんですが、手法としてはコンピューターの扱いに慣れていない人でもやれそうだなと思うんです。いろいろと試行錯誤しても、そうやって作ったものとさほど強さが変わらないというのは……やはり、強くする限界に来ているということなんでしょうか?
杉村:
テラショック定跡を使っても、手入力の定跡よりもレーティングが上がらず、NNUE関数をいじっても、レーティングが50変わるかどうかという状況なんです。
だとしたら、探索部を改良するか、それともディープラーニングに移行するという方法のほうが強くする可能性はある……という話を、これから磯崎さんがしてくれると思います(笑)。
──ではそろそろ電竜戦の話題に……今回お二人が『みずうら王』というソフトを作られて、それはどんなソフトになると予測しておられましたか? また、その予測が電竜戦の結果とどう違ったのかということをお聞かせいただきたいのですが。
磯崎:
私ねぇ、将棋盤を見てると何か気持ち悪くなるんで……。
──ええ!?
磯崎:
将棋自体、あんまり見なくて。開発してる時は、将棋盤を一切見ないんです。開発したものを自己対局させるフレームワークがあって、そいつに投げてやれば、勝率だけが返ってくる。
──ボタン1つで。そして数字だけを見ていると。
磯崎:
これが将棋ソフトの開発なのか、はたまた温室栽培で野菜の収穫量を増やすソフトの開発なのか、わかんなくなるんです(笑)。