──将棋クエストで四段の実力者の言葉とは思えません(笑)。
磯崎:
探索部も、強いやつを大会前に公開しちゃって。自分で自分の首を絞めた面が……(苦笑)。
──じゃあ大会の進行をご覧になっていた杉村さんにうかがいます。初日は、圧勝でしたね。本戦で2位になったGrampus(ぐらんぱす)にも勝っていましたし。
杉村:
あれは定跡の段階で勝っちゃいましたね。
──しかし2日目の本戦では、競争相手に後手を引き続けるという不運が……。
杉村:
クジ運のせいにしてはいけないんですけど……ただ、人間だと先手52%くらいでも、コンピューター同士だと先手55~57%くらい勝率に差があります。それだけでレーティング50くらい損をしていることになりますね。
──あの、脇に逸れちゃって申し訳ないんですが……「将棋は先手必勝なのか、それとも後手必勝なのか?」っていう話題は、たぶん将棋が生まれたときからあると思うんです。
その……後手のほうが強いソフトを作るのって、やっぱり無理なんですか? 将棋のゲーム性として……。
杉村:
後手のほうが強いかはともかく、先手番で強い評価関数と後手番で強い評価関数が異なるということは、ありうると思います。
──おおっ!
杉村:
それ同士を戦わせて、後手番の勝率が先手番の勝率を上回るかは別ですよ? ただ、先手番専用・後手番専用とで評価関数をわけたほうがいいのかもしれないという話は、磯崎さんともしたことがあります。
──そういう構想はおありなんですか? 磯崎さん。
磯崎:
将棋の結論が仮に引き分けだとすると、後手は引き分けに持ち込むしかないんです。ただ……引き分けで、どうなの? みたいな……。
──プロの対局だと、千日手か持将棋になるということですよね。後手番で絶対に千日手にする人がトップだったら……最初は面白くても、すぐに飽きるでしょうねぇ。
磯崎:
引き分けにしたいなら、後手は引き分けになりやすい戦型に誘導したほうが得なわけです。でも普通の実戦だと、仮に将棋が先手必勝でも、先手が間違えたら後手だって勝てるわけです。