それにコンピューター将棋の大会だと、引き分けは0.5勝になっちゃう。そうすると、そこを狙うのは損だなと。
──確かに。
磯崎:
角換わりとかは、定跡レベルで千日手を狙えてしまう。だから先手で角換わりに行く定跡を使うのは、損でしょうね。
杉村:
それは思います。みずうら王の定跡は私が用意したんですが、先手は相掛かりしか指さない。千日手になりにくいからですね。
──すみません。脱線してしまって……では2日目の本戦ですが、みずうら王は4回戦で、初日には勝ったGrampusに負け。そして5回戦で、ディープラーニング系のソフトであるGCTに敗北しました。
杉村:
GCTに負けたのは序盤の精度の差かなと思ったんですが……Grampusに負けたのは、上手く指されたなと。
──相掛かりの、捻り飛車でしたよね?
杉村:
ええ。みずうら王は振り飛車が苦手で、しかも後手番で相掛かりを避けません。そこを上手くミックスして突いてこられた感じがして……ああ、これは嫌な形だなと。
──捻り飛車は、途中で飛車を横に動かしますからね。それが結果的に振り飛車っぽい形になったということでしょうか?
杉村:
そうなのかなぁと。で、実際に逆転されてしまって。向こうも事前にそういう定跡を作っていたわけではなくて、ソフトが勝手に指したみたいなんですけど。
──優勝候補のみずうら王が中盤で2敗し、大会は予想外の大混戦。ものすごく白熱しました! そして迎えた最終局の9回戦で、歴史に残るドラマが起こります。
杉村:
最後のBURNING BRIDGESさんとの対局は、勝てば逆転優勝だったと思うんですが……。
──熱い戦いでしたよね!
杉村:
千日手模様から、負けてしまって……ただ、みずうら王がどれだけ強かったとしても6割くらいしか勝てないわけです。同じ3990Xを使っていますし、そんなに差はないとすると……。
──こういう結果も有り得ると。みずうら王は勝てば優勝という戦いに負け、最終的には4位という成績でした。負けた将棋は全て後手でしたね。
そして……1位には、なんとディープラーニング系のソフトであるGCTが輝くという、驚愕の結果となりました! まさかあのインタビューの直後にもう、ディープラーニングが1位になる時代が訪れるとは……。