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──わかりました! 結論としては、水匠が振り飛車に弱いのと、トッププロが藤井先生に振り飛車をぶつけ始めたのは、関連があるかわからない……というか、多分ないだろうと。

振り飛車は本当に不利なのか?

磯崎:
 …………ただでも、コンピューター将棋は振り飛車を指した瞬間にガクン! と評価値【※】が落ちますけど……そこまで悪くないんじゃないかというのは、みんな思ってて。

※有利不利の目安を数値として視認化したもの。

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──ほう? ソフトを作っていらっしゃる方々も、そう思っていらっしゃったんですか? 以前、『さばきのアーティスト』の久保利明九段からも同じようなことをうかがいました。

磯崎:
 対局を続けているうちに、評価値が回復することがわりとあって。ホンマに悪いならそのまま押し切らないといけないのに、持久戦ぽくなったら互角になってたりと。

──それは、どういう理屈でそうなるんでしょう?

磯崎:
 一手の価値が高い序盤においては、飛車を振るということで評価値が大きく落ちる。けど持久戦模様になった時は、一手の価値がそこまで大きくないので、最初に下がった分の評価値を維持できないんでしょうね。

──あ! なるほど……。

磯崎:
 すぐに戦いを仕掛けられれば、そのまま居飛車が有利になるんでしょう。けどお互いに手を殺し合うような展開になったら……戦いが始まらなかったら、評価値がゼロ近くまで戻ってしまうんです。

磯崎:
 だから「振り飛車、そこまで悪くないんじゃないの?」というのは、誰しもが思ってることなんです。

──みんな「おかしい」と思ってるのに、なぜそうなってしまうんでしょう?

磯崎:
 自己対局をして教師局面を作っているんですけど、自己対局する時の読みの深さって、わりと浅くて。一手あたり一秒未満の対局なんです。

 いうたら弱い者同士が戦ってる感じなので。弱い者同士なので、すぐに戦いが始まって、すぐに決着が付く。でも長い持ち時間で戦わせると、戦いが起こらないんです。