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半年後に将棋の神様が現れるかもしれない話──最強将棋ソフト開発者が語る“ディープラーニング勢の台頭による将棋ソフトの進化”

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genre : ライフ, 娯楽

note

杉村:
 プロの方々が、どこまで評価関数を比較してるかという話だと思うんですよ。

 私はもともと、振り飛車だと水匠は弱いということは知っていたんです。振り飛車しか指さないソフト……私の作った『振電(しんでん)』とか、Qhapaq(かぱっく)さんの作った『振デレラ(しんでれら)』シリーズだったりと対局させると、対振り飛車が得意なソフトであれば6割5分くらい勝つのに、水匠は5割ちょっとくらいしか勝てないんです。

──かなり勝率が変わりますね……。

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杉村:
 振り飛車に対する評価は、おそらくおかしいと。だから対抗形の棋譜の検証について水匠を使うのは……あんまり、たぶん、よくない。

 ただ、それが将棋の内容としてどうなのかというのは、私は棋力がそこまでないのでわからないんですけど……でも、明らかに振り飛車に関しては他の評価関数を使ったほうがいいということは、知っていました。

 さらに言えば、それを調べることは容易なんです。だからプロの先生方も、知っていらっしゃったのかもしれない。

──前回のお話で「どんなソフトを使っているか公言すると、不利になる」というのはそういうことだったんですね。では、それを知っていて、水匠を使っている藤井先生に振り飛車をぶつけたかは……?

杉村:
 それはわからないです(キッパリ)。

磯崎:
 たとえばレーティング【※】50下がっていたところで、人間がそれを察知できるかということもありますからねぇ。

※チェス界における棋力判定方法を将棋界に導入したもの。レーティング差200は、段位で言うと一段の差。

 パソコンを変えた時にレーティングが200くらい変わったら「あ、強くなったな」と実感できるでしょう。でも評価関数を変えても50くらいしかレーティングが変わらなかったとして、それを人間が知覚できるかというと……なかなか……。

──難しいと。

磯崎:
 (人間とソフトが)同じくらいの棋力なら、知覚できるかもしれません。けど、かなりの差がありますから……レーティングが1000ナンボとか離れてる状態ではねぇ。

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