──普通に対局させて、学習させていくだけでは、頭打ちになってしまったと。
杉村:
「ふーん、まあこのくらいの実力にしかならないのか……」って思っていたんです。が!
──が?
杉村:
そこからどうやって強くすればいいかを考えてみたんです。そもそもどうして強くならないのかというと、表現力の限界……要するにたくさん学習しても「もう憶えられません!」っていう感じになりつつあったんです。
──詰め込み教育の弊害みたいな感じですね……。
杉村:
だとしたら、いらない部分を削って、いる部分だけを学習させればいいと。
──教科書を頭からぜんぶ覚えるんじゃなくて、試験に出てきそうなところに限定して覚えるみたいな?
杉村:
はい。出そうな局面だけに絞るという方法しかないんじゃないかな、と。
floodgateというコンピューター同士の対局場があるんですけど、そこで現れやすい戦型において、最も勝率が高くなるような評価関数を作る。そういう方法で学習させていって、勝率を上げていった……というのが、水匠の作り方です。
──と、いうことは、逆に言えば……。
杉村:
floodgateに現れない戦型では、弱くなってるということですね。そこは磯崎さんの計測でもそうなっているようなんです。
コンピューター同士の対局で出ない戦型の代表格は、振り飛車。だから振り飛車だと弱い。そういうことです。
──磯崎さんは、どういった方法で水匠の強さを計測なさったんです?
磯崎:
私が計測に使っていたのは、5年くらい前に作った古い局面集……プロの定跡とかが入っているものです。24手目で互角になっている局面だけを抽出して、それを使って検証しました。ずっとその方法を使っていたので。
だから杉村さんが時々ツイッターで「水匠これだけ強くなりました!」ってツイートされてたんですけど、その評価関数を私がダウンロードして、自分の評価関数と対戦させても、なんにも強くない。それは結局、杉村さんとは計測の仕方が違うからだったんです。