前回はアマゾンの「おすすめ欄」が提示してくる映画作品のことを述べた。ただ最近では、旧作はDVDよりも配信で観ることの方が多く、アマゾンの配信サービスであるプライムビデオをよく使う。
ここは日本映画のラインナップがかなり充実してきており、本連載の執筆においても結構お世話になっている。そのためか、「あなたが興味のありそうな映画」というおすすめ欄は旧作邦画、特に時代劇や戦争映画ばかりがズラリと並んでいる。その大半は観たことのある作品なのだが、中には前回の『村八分』と同様に、「え、こんな作品、あったんだ!」と驚かされるような作品もあったりする。
たとえば今回取り上げる『ごろつき船』もそう。
大河内傳次郎と月形龍之介の二大スター共演で、監督は森一生、大佛次郎の原作で脚本が成澤昌茂と菊島隆三という豪華な座組の作品なだけに、「時代劇研究家」を名乗る身としては、これまで知らなかったことは恥ずべきことだ。
舞台は幕末の蝦夷・松前藩。密貿易に絡む藩重役の不正事件が描かれ、アイヌ民族までも巻き込む、スケールの大きな内容になっている。そして、これまで見落としていたことが悔やまれる、逸品級の大エンターテインメントだった。
序盤から盛り上がる。濡れ衣を着せられた商家。襲い来る刺客。救出に現れる謎のアイヌ男性。これが実は、不正事件の捜査に来た幕府巡検使・主水正(大河内)だった。
燃え盛るセットで大河内の大立ち回りが繰り広げられ、早くも引き込まれていく。
次々と迫りくる危機から逃れ、真相に迫っていく展開は、さながらスパイ映画だ。自身のコンプレックスをたぎらせながら主水正を狙う刺客を演じる月形も迫力満点で、緊張感を高めていた。
アイヌ差別への問題提起も盛り込みつつ、物語はスピーディに進む。彼らの苦しみと怒り、そこからの叛乱という展開が、カタルシスをもたらす。情報を得るためなら女性にでも無表情に刃を向ける大河内のクールさも魅力的だ。
そして最後は、お待ちかねの大河内と月形との一騎打ち。両雄相譲らずの見応え十分の決闘は、思わぬ形での決着となる――。
名作や傑作という作品ではないが、娯楽映画としては十二分に楽しめる一本だった。
他人に映画を勧められても、なかなか乗れないことがある。先方とこちらの趣味が必ずしも合うとは限らないからだ。が、アマゾンは違う。購入実績から、AIがこちらの嗜好を熟知し尽している。おかげで、面白い作品に出会えた。
アマゾンのAI――、信頼できる、我が良き友である。