「もう、これでいい」
最適な湿度と温度、そして小屋内にたちこめる薪の薫香。もはやこれ以上のものはない。そのセッティングを保つために定期的にスタッフがつきっきりで火の番をしてくれる。
最高の状態で蒸された後は、雪溶け水を引いてワイン樽にかけ流した水風呂へ。“ザブン!”と頭まで入れば凍えるほどの冷たさと、水質の柔らかさに圧倒される。水風呂をあがり目の前のととのい椅子へ。ここは環境そのものが最高の外気浴。体をふき、天を仰ぐと枯木の間からのぞく澄み渡る青空。「もう、これでいい」。
フィンランドのスモークサウナをほうふつとさせる、唯一無二、手作りのサウナ小屋。それを一から作り上げたThe Sauna支配人の野田クラクションベベーの人生もまた、波乱万蒸だった。
破天荒な社長からの『電波少年』ばりの無茶ぶりの日々
「The Saunaは、ホームページやウェブ制作をメインにしている株式会社LIGが運営しているんですが、僕はインターンの面接を受けたときに社長の吉原に『何でもやります』と言ったら、『ほんとに何でもやれる?』って質問されて。で、いきなり『とりあえず名前つけよっか、じゃあ野田クラクションベベーはどう?』と(笑)」
かつてロシアの二人組ガールズユニット「タトゥー」が来日した際、「Mステ」(テレビ朝日系)の出演時間になっても楽屋から出てこずドタキャンした事件があり、その時にミッシェルガンエレファントが尺を埋めるためにサプライズで歌った曲が『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』だったと、社長は説明した。
「これこそロックだろ、人はみんなロックに生きなきゃいけないからお前も“野田クラクションベベー”という名前でいけと、社長が熱弁をふるうんです。よくわかんないけど、なんでもやるって言っちゃったしなと(笑)。バイトとして採用されたものの、その後もテント野宿でアメリカ横断企画とか、1か月でTシャツ400枚売るとか、ラッパーを目指して投げ銭で生活とか、業務内容は無茶ブリの極み。昔あった『電波少年』を地で行くみたいな感じのミッションが社長から次々に来ては、それと格闘する日々をブログに投稿するのが僕の仕事で。とにかくページを見てもらわなきゃいけないんで、ウェブ制作会社の社員が人気のブログを作るにはどうしたらいいかと必死でした」