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死ななかったから昇給ってなんだよって(笑)

 社長からのミッションと格闘するうちに、野田は新卒1年目で晴れて社員になった。入社して最初に下った指令は、「日本一周」。使っていいお金は1日300円、1年間東京に帰ってこないというルール。半月に1回、電話で“査定”があったという。

「『よかったね、死ななくて。おめでとう。じゃあ昇給ね』みたいな(笑)。死ななかったから昇給ってなんだよって(笑)。

 この日本一周の旅では、会社で輸入していたスピーカーも売らなくてはならなかった。

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「2000個中2個しか売れてなかったら、『在庫の1998個を車に積んで日本一周してきな』と言われて(笑)。車にスピーカーを積んで、飛び込み営業です。グーグルマップで調べては、スケボーショップとかサーフショップにかたっぱしから飛び込んで。何の武器もないので『せめてサーフボードを1個買わせてください』と会社に掛け合って、いかにもサーファーを装って営業したり。お店の方には、「君、サーフィンやってないでしょ(笑)」とバレましたけど、ショップの人たちに正直に事情を話すと「面白いね」と言われて、結果20店舗と契約。さらに旅先で出会った人やAmazonなどのECも使い、トータルで1200個ぐらい売りました。そこが自信につながったんですよね」

 新卒で日本一周とスピーカーのセールス。なかなかに昭和な感じもするが、これが発端となり野田はサウナと出会い、“人生初ととのい”を経験する。

 
 
 
 

人生初ととのいはお遍路中

「あるとき、旅の途中で社長から連絡があって、『お前、ブログで見てると太ってんな。お遍路歩きして痩せてこい』って言われたんです。またしても意味がわかんないんですけど、言われたとおり、お遍路を始めました。

 20キロの荷物を背負いながら、ひたすら歩いて野宿。歩くだけだったらいいんですけど、ブログを書くためにWi-Fiを探して入稿しないといけないでしょう。その都度立ち止まらなきゃいけないし、ローソンの外にある電源を『使わせてください』とお願いしたり。大変なんですけど、お遍路の笠をかぶってるとだいたいみんな「いいですよ」と言ってくれる(笑)。そうやって助けて頂きながら、イートインスペースで記事を書き、残り1100キロになった時、『これ終わるのかな?』と不安になって。とにかく黙々と歩き続けた。足は痛むわ、夏場でめっちゃ暑いわで。たまに自販機を発見すると、もう死に物狂いで飲み物買って。そんな日々の中で唯一の楽しみがお風呂になっていったんです。風呂屋はどこにでもあるわけじゃないので、数日間入れないなんていう時もザラで」

 カンカンの炎天下のお遍路歩き。それ自体がもはやサウナといっても過言ではない。

「ある時、高知の田野町というところにある、『たのたの温泉』というスーパー銭湯に行ったんです。すごい日焼けして肌はヒリヒリ、もうまっかっかです。それで体洗ってからまず、お湯につかろうと思ったら、水風呂に気持ちよさそうに浮いているおじさんがいて、自分もまず水風呂にするかと。入ってみたらすっごい気持ち良かった。いつもだったら冷たいのに、あったか冷たいみたいな。『なんだこの感覚!』と。

 ちょっと冷えたタイミングで、サウナ室にそのまま入ったんです。そしたらものすごく気持ち良くて。安室奈美恵さんの『can you celebrate』のオルゴールバージョンが流れてたんですけど、めっちゃクリアに聴こえた(笑)。それでまた水風呂入ったら、『うわぁ気持ちよすぎる!』って(笑)。さらに外気浴ゾーンに行ったら、近くの川のせせらぎと、午後の陽がプワーっと射してきて『あぁ気持ちいい……』(笑)というのを経験して。

 その日はまた野宿だったんですけど。すっごいよく眠れて。こんなに劣悪な環境なのに、今までで一番良く眠れたなぁと思って。そこから意識的にサウナに行くようになりました。色々回っていく中で、『サ道』の伝説のサウナ―の蒸しZじゃないですけどサウナの入り方を指南してくれる人もいて。それがサウナにハマるきっかけでした。22の時です」