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「2人が帰ってきて『うまくやった』と言い、腕時計と2万円を口止め料としてくれた」

 相川は定職がなく、姉夫婦が経営しているオパールで寝泊りしているうち、客としてきた正田と知り合い、麻雀仲間になった。事件に関する供述は新聞によって微妙に違う。朝日を見よう。

 24日ごろから、正田、近藤の2人から博多さんを殺して金を奪う相談を持ちかけられたが断った。

 

 犯行日の27日、正田に言われるまま、(正田の下宿の)佐藤さんの家で待っていると、午後5時すぎ、2人が帰ってきて「うまくやった」と言い、腕時計と2万円を口止め料としてくれた。これを受け取ってすぐ別れてしまったから、後のことは知らない。もらった金で帽子とズボンを買い、鵠沼で泳いだりして遊んで過ごしたが、2人に会って詳しいことを聞こうと思い、佐藤さん方を訪れたら捕らえられた。近藤と正田の2人が殺した。

 2万円は現在の約12万6000円。腕時計は被害者から奪った物だった。朝日の同じ紙面には「関西へ高飛び? 阪神に縁故の正田、近藤」の見出しの記事が。7月31日付毎日朝刊は「正田は関西、近藤は都内?」という捜査本部の見方を示した。

「彼を知る周囲の人たちは『飲む、打つ、買うの乱行』を口をそろえて語っている」

 7月30日付朝日朝刊では「典型的な不良青年 正田という男」という見出しで人物像が紹介されている。

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「彼を知る周囲の人たちは『飲む、打つ、買うの乱行』を口をそろえて語っている。卒業したとはいうものの、慶応時代もマージャン、ダンス、女遊びにふけって学校へはほとんど行かず、卒業試験も単位が不足して、追試験で危うくパス。入社した三栄証券も『勤務不良』が理由で解雇されている。昨秋には母に内緒で辻堂の自宅を担保に10万円を借り、全部遊びに使い果たした」「学生時代にやったレスリングがもとで肺結核にかかったうえ、家庭内の空気が気に入らぬとヤケになっていた」「薄っぺらな人間だが、愛嬌のない冷たい非人情性もメッカ事件のようなすさまじい残虐性がひそんでいたというわけだ」書きたい放題の記事だ。

新聞は正田の人物像を取り上げた(朝日)

 その後も「第四の男?登場」(7月31日付夕刊読売)、「正田は東京にいる?」(8月1日付読売)など、情報が乱れ飛ぶ中、事件から1週間後の8月3日、ボーイが逮捕された。同日付毎日夕刊は「近藤、けさ静岡で自首 分け前使い果たして決意」の見出し。

メッカのボーイも静岡で逮捕された(東京)

「新橋駅前のバー『メッカ』殺人事件の有力容疑者として捜査本部から手配中の同店ボーイ近藤清こと金琪華(20)は犯行後8日目の3日午前9時10分、静岡市・静岡中央署駒形派出所に「私が『メッカ』殺人事件の近藤です」と自首したので、直ちに身柄を同署に移して取り調べを行い、午後1時1分、静岡発急行『雲仙』で同署・山田警部補、鈴木刑事ら3名に護送され、同4時23分、東京駅着。警視庁に留置される。これで『メッカ』殺人事件容疑者の逮捕は主犯正田昭を残すのみとなった」