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「GCTが電竜戦で優勝したことで、個人の力だけでやっていくという部分は満たされたということもありました。やはりディープラーニング系ソフトを強くしていくためには、研究リソースが絶対に必要になっていくので……」

「ただ、企業の力でどんどん強くしていくような競争にはしたくはないです。AIの技術はまだまだ未熟ですから、新しい技術を取り入れることで強くすることはできるはず。そこで競い合いたい」

「私も、やねうら王系の技術には頼らず、新しい技術で強くしましたから。今後ディープラーニング系に参入する人には、『お金じゃないんだ』というところを見せて欲しい」

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 山岡の視線は、戦いの舞台がディープラーニング系に移ってからの世界を見詰めている。
 そして山岡は考える。
 かつて自分が目にした、大会の決勝に残ったソフトが全て、やねうら王のライブラリという光景。
 それと全く同じことが、数年後……dlshogiでも起こるかもしれない。
 その時、山岡はどうするのだろう?

「開発を、すぐにやめるということは……ないと思います。せっかく関わることができましたし、これまで多くの時間を費やしてきましたから……」

「ただ、ポーカーや麻雀といった不確定情報ゲームにも興味があります。いろんな技術を勉強したいですし……そうだ、私は趣味でスマホのアプリも作っているんですけど――」

「それは音程を解析するものなんです。絶対音感がない人には、そういうことってできませんよね? けどそのアプリがあれば、絶対音感を備えた人と同じようなことができるようになるわけで」

 海外でもそのアプリは多くダウンロードされており、山岡のもとには英語で様々な要望が寄せられる。
 その経験が、山岡にこんな思いを抱かせた。

「私は『人間とAIの関わり』というところに興味があります。AIが人間の能力を補助するのって、その……『いいな!』って思うんです」

「将棋AIも……dlshogiも、そういう使い方をしてもらえると嬉しいですね」