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(画像は電竜戦長時間マッチ「水匠 vs dlshogi」第1局 ゲスト:渡辺明名人 解説:阿部健治郎七段・佐々木勇気七段より)

「dlshogiがずっと千日手を読んでいるのに、水匠が評価値を上げ始めたところで『これはちょっとマズいな』と思いました」

「千日手をずっと読んでいたのに、それを打開されてしまった。もう一度、一から別の手を読まなくてはならなくなった。さらにそこは、浅く読んでしまう終盤だった……」

 163手目。一手詰みの局面まで指されてから、dlshogiは投了した。

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「やはりまだ、終盤に関してはNNUEのほうが強いということなんだと思います」

 しかし敗北を目の当たりにしても、山岡の信念は揺るがない。

「指し手を予測するということと、局面を評価するということ。その精度が上がれば必然的に強くなる。探索のアルゴリズムも統計的な手法で、その精度が上がれば強くなる。そういう技術が使われているので」

「そして精度を上げるという点においては、ディープラーニングのやり方で、学習が進んでいるという実感があるので。だから将来的に伸びるという確信がありました」

「ハードウェアが強くなるに従って、モデルも大きくしていく。そうすれば今後もどんどん強くなっていくと思います」

dlshogiの進化が及ぼすプロ棋界への影響

 藤井聡太はいち早くディープラーニング系の持つ序盤の力に着目し、その棋譜を参考にしていると公言した。その藤井を追いかけて、渡辺明もdlshogiを導入した。渡辺が解説者として登場したのも、dlshogiの真の実力を見極めたかったという面もあるだろう。
 そして今後どんどんdlshogiが強くなっていくのであれば、その棋譜はプロ棋界に極めて大きな影響を与えることになるだろう。

 そのことを、山岡はどう感じているのだろう?

「それについては……実は最近、少しずつ意識するようになっています。前は全然思っていなかったんですけど(笑)」

「それで新しいモデルを公開したというのもあります。今までは古いモデルしか公開していなかったので、弱いまま使い続けられるのも嫌だなと。水匠と同じくらいの強さのものを公開したんです」