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 水匠の杉村は事前に行ったテスト対局で『こちらが千日手を読んでいるのに、dlshogiはぜんぜん千日手を読まずに評価値を上げていって、それで負けることが多かった』と語っていた。
 そして『山岡さんにインタビューするなら、千日手を読まない設定にしていたのかどうかを聞いてきてください(笑)』とも。

「特段、千日手を読まないようにしていたわけではないです」

 山岡はそう答えた。

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「千日手を読まないよう設定することもできますが、評価が歪みますので。あんまり極端なことはしないほうがいいです」

 この将棋について、プロ棋士はどう見ていたのか?
 渡辺明名人は「人間同士では、こうはならない将棋。(先手の)金が3八にいるのと、後手だけ1四歩を突いてるところとか……こういう将棋も5年くらい前までは無かったからなぁ」と、感心したように話している。

 佐々木勇気七段が「これからこういう棋譜をいっぱい並べて、こういう感覚を身に付けていかないといけないんですね」と言えば、渡辺は「身に付くのかな?」と首を傾げ「最初からAIから学んだ人は身に付くのかね? これがどっちがいいかわかったら強すぎる……」

 山岡自身は、将棋に対する知識がさほどないこともあり、プロ棋士の発言や視点を興味深く聞いていた。
 自分の作ったプログラムを棋士にどう使って欲しいか。
 人間と機械の関係がどうあるべきか。
 その点について山岡には信念があったが……それは最後に語ってもらうことにしよう。

 渡辺が退席すると、入れ替わるように阿部健治郎七段が再び登場する。
 そしてdlshogiが72手目に指した4九銀という手を絶賛した。「これが20手くらい前に見えていたらすごい」
 佐々木も興奮した口調で「しかもこれ以外は全然ダメと。これ、相当いい手に見えます。水匠はどうやって凌いだんですかね?」

(画像は電竜戦長時間マッチ「水匠 vs dlshogi」第1局 ゲスト:渡辺明名人 解説:阿部健治郎七段・佐々木勇気七段より)

 2人が絶賛したのが、dlshogiの読みの深さだ
 針の穴を通すようなその読み筋は、どのように生まれているのだろう?