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 加納の目にはもう、長時間マッチで戦っているdlshogiが仮想敵として映っている。

「dlshogiはリソースが潤沢なので、同じことをやっても勝てない。とはいえもともと山岡さんとはGPUリソースに差がありました。私はより少ないコストと時間でdlshogiを上回ることができるかをずっと追究し続けてきましたから」

「私の自慢ではあるんですけど……昨年11月の電竜戦に優勝した際のGCTは、無料のクラウドサービスやノートPCしか使っていなくて、大会当日のクラウド費用くらいしかお金がかかっていないので、トップ開発者の誰よりも開発にお金を使っていない自信はあります(笑)」

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「潤沢にお金を使えば強くなることはわかっています。けど、そういう人ばかりじゃないことは、私自身を含めてそうなんです。だからいかに費用をかけずに強くするかは今後の検討課題だと思っています」

 だから参入障壁は高くないし、誰にでも優勝するチャンスはある。
 加納が心配するのはむしろ、別の面だ。

「実は今回のイベントが盛り下がっていたら、私も将棋ソフト開発から足を洗っていたかもしれません(笑)」

 GCTが電竜を獲得した際に全く話題にならなかったのと同じようなことが今後も起こるのであれば、将棋ソフト開発に未来はない。口調こそ柔らかかったが、そう語る加納の目は真剣だった。
 では、今後ディープラーニング系のソフトがさらに強くなるためには、どんな技術を持つ人々が必要なのだろう?

「ディープラーニングに精通した人々ですね。『Kaggle』という機械学習のコンペがあって、優勝すると100万とか200万とか多額の賞金が出るんですが、そういうコンペで活躍している人が参加してくれたらどうなるかな? と思います」

「そういう人たちが積極的に入ってくれるためには、名声が得られたり賞金が得られたり、大会が魅力的じゃないといけない。それは電竜戦の理念とも合っているのかなと思います」