いま、男性メイクが流行している。ジャニーズグループ「Snow Man」のラウールと高級ブランド「ディオール」のコラボリップが発売されたり、資生堂から男性メイクライン「SHISEIDO MEN」が登場したり。YouTubeをのぞけばメンズメイクのHOWTO動画なども無数に見つかる。
その一方で、「男が化粧をするなんて」という時代を生きた“大人な男性”にとっては、「メイク」はまだまだハードルが高いというのが実情だろう。
しかし“普通のおじさん”がメイクに挑戦する漫画がある。糸井のぞ氏著、鎌塚亮氏原案のVoCEオリジナル連載漫画『僕はメイクしてみることにした』だ。
主人公は「平凡なサラリーマン、独身、38歳の前田一朗」。ある日、自分の疲れ切った顔とたるんだ体を目の当たりにし、ショックを受けたことから一念発起し、コスメ大好き女子のタマちゃんを「師匠」と仰ぎ、メイクを始めるという物語だ。
著者の糸井のぞ氏、原案者の鎌塚亮氏へのインタビュー取材を試みた。当初は鎌塚氏のメイクを始めた経緯、コミカライズに秘められたメッセージなどについて話を聞いていたが、インタビューを進めると、現代社会に隠された男性の“生きづらさ”が浮かびあがってきた――。
メンズメイクの記事をnoteに書いたら大反響
この日、筆者は文春オンライン編集部の男性記者(20代後半)とともに、漫画を掲載している女性用メイク雑誌「VoCE」編集部へ向かった。そこで待っていた鎌塚氏はスラっとしたスタイルで、肌はみずみずしく、若々しい。今年で37歳になるというが、実年齢より若く見える。
鎌塚氏自身は、現在もたばこもお酒も油っこい食べ物も好きで、「好きなモノをやめるのは嫌。それはそれで俺のセルフケアだから!」というスタンスだ。
「ですが30代に入ってから体調の変化を感じるようになって、二日酔いが治りにくかったり、疲れがなかなか取れなかったり。ジムやサウナ、自炊などを順番に試していくセルフケアをnoteに書いていました。その一環として、昨年7月末にメンズメイクの記事を投稿したところ、反響がとても大きかったんです。
男性のメイクに対する関心の二極化
でもそもそも、妻の化粧を毎日見ていたのですが、完全に自分とは関係ないことだと考えていました。家の鏡の前に妻の化粧品がガーッと置いてあるけど、スキンケアとかメイクとか、具体的に何をしているのかをそもそも知らないような状態だった」
そして、そんな鎌塚氏はVoCE編集部がずっと探していた人材でもあった。VoCEチーム編集次長・大森葉子氏は連載決定の経緯を語る。