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「サウナや筋トレはOKだけど、日傘やスキンケアはNG」世に蔓延る“男性文化”の正体《普通の男(37)の“生きづらさ”を漫画化》

「サウナや筋トレはOKだけど、日傘やスキンケアはNG」世に蔓延る“男性文化”の正体《普通の男(37)の“生きづらさ”を漫画化》

2021/11/03
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 漫画の“化粧水初体験”には鎌塚氏の体験談が反映されている。

「化粧水や乳液というスキンケアアイテムを日常的に取り入れることにしました。使うと、本当に肌がもっちりして心地良いんですよね。スキンケアがこれほど体調管理や自分の気持ちを上げる上で重要だったとは……。盲点でした」

©糸井のぞ・鎌塚亮/講談社

男がコンシーラーを使えない「理由」

 しかし鎌塚氏が最初に挑戦したのはスキンケアではなくて日焼け止めだ。「妻が勧めてくれた、顔色がトーンアップする日焼け止め」を試したところ、その変化が今でも忘れられないと語る。

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「日焼け止めを塗っただけで、鏡のなかの自分の顔色がパッと明るくなったんです。『あ、明るい!』って驚くぐらい。今まで自分の顔色が暗かったことに気づいていなかったんだって。それが衝撃的な原体験ですね。そこで自分の見た目がいかに年を取って変わっていたか、初めて実感しました」

 その一方で、クマやくすみをカバーするコンシーラーや毛穴やシミを隠すBBクリームのような色つきアイテムになると、「勇気が必要」で、なかなか気軽に取り入れることはできなかったようだ。

©糸井のぞ・鎌塚亮/講談社

「他の人から見たら分からないレベルでも、つけて外に出るのは、やっぱり少し怖いんです。人目が気になり、自分が見られているんじゃないかと思っちゃうんですよね (笑) 。アイメイクやリップメイクまでいくとハードルがさらに高くて。でも、逆に自分は人からどう見られているのかを、これまで全然気にしていなかったということもわかりました」

 しかし“他者からの視線”を意識したことで、鎌塚氏のメイク熱も高まった。

 鎌塚氏がメイクを学んだのは、タレントのりゅうちぇるや現役の美容師たちがHOWTOを紹介しているYouTube動画から。というのも、連載開始時点では男性用のメイクの教本はほぼなく、VoCE編集部から関連本を大量に送ってもらったものの、「細胞がどうとか、とにかく難しくて。ちょっと潤したいだけなのに、これ必要?みたいな(笑)。結局は妻や友人、美容師などに教えてもらうようになりました」。

 そんなメイク鍛錬の過程で出合ったのが、橋本治の論考『美男へのレッスン』だという。