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「カワイイは作れた」アラサー男性記者が美女に変身したテクニック《2万3000回リツイートされた“美少女写真”の真相》

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 4月8日、Twitterに投稿された一枚の写真が日本中を驚かせた。

2万3000回リツイートされた投稿

 20歳前後の可愛い女の子の自撮り写真、かと思いきや背後の鏡にはスーツを着た中年男性が映っている。Twitter上では「理解が追い付かない」「後ろのおじさんが気になる」などと言ったコメントがあふれ、リツイート数は2万3000回にのぼった。

 果たしてトリックか、CGか。文春オンラインではこの写真の真相を究明すべく、取材を開始した。

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 7月某日、記者(20代後半)は東京・府中のとあるカフェで人を待っていた。前日にはその人物から“あるアプリ”をインストールするよう指示を受けていた。

「お待たせしました」

 柔らかな笑顔を浮かべた中年男性がこちらに歩いてくる。この男性こそ、冒頭の投稿の主、「在宅のアーマー」氏(50代)である。

在宅のアーマー氏 ©︎文藝春秋

「カコジョとは何か」カコジョ論争を鎮めた一言

 いま、写真加工アプリを使って美しい女性へと変身した写真の投稿がSNSで急増している。このようなアプリを使って写真の加工を楽しむ人たちは「カコジョ」と呼ばれている。「カコジョとは加工女装と加工女子の略称です」と在宅のアーマー氏が解説する。

「もともとは加工女装の略称でしたが、今は加工女子の略称としても使っています。女装だと男性しかカコジョと呼べません。それよりもジェンダーレスな定義にして女性も楽しめるようにした方が時勢にもあっていると思いました」

 実は、カコジョが加工女子の略称になるまでにはひと悶着あった。2021年7月頃、Twitter上で女性から「男性しかカコジョを名乗れないのはおかしい」という意見が出たのだ。SNS上ではこれに賛同する意見と、「女性を含む必要は無い」という意見が対立。こうした“カコジョ論争”により、一時期は険悪な雰囲気がカコジョ界隈に流れていたという。

 そこで「カコジョとは加工女装と加工女子の略であり、ジェンダーレスで楽しむものだ」と定義したのが在宅のアーマー氏だ。在宅のアーマー氏はカコジョ界隈では“権威”として認知されており、1万2000人と界隈では圧倒的なフォロワーを持つ氏の一声で“カコジョ論争”は沈静化したのである。

 最近ではカコジョならぬカコダン(加工男子)と称したイケメン男性に変身した写真の投稿も増えており、ジェンダーレスな楽しみ方が広がってきているという。

こちらは「カコダン」画像 ©️文藝春秋 (女性記者提供)

在宅勤務きっかけでカコジョ沼にドハマり

 在宅のアーマー氏がカコジョを始めたきっかけは、新型コロナウイルスの流行で在宅勤務が増えたことだった。

「家にいる時間が増えたことでSNSを見る時間も増えました。すると、ある時から自分のタイムラインに女の人の写真が流れてくるようになったのです。ところが、投稿しているのは男性のアカウントのはず。そこで調べるとカコジョという楽しみ方があることを知ったのです」

 在宅期間で自由な時間が増えた氏は早速写真加工アプリをダウンロード。そのなかで特によく使うようになったのが、「FaceApp」と「Meitu」だ。どちらもAIを使った写真編集アプリで、誰でも手軽に写真を加工することができる。記者が事前にダウンロードするように指示を受けていたのもこのアプリだ。若返り、老化、女性化等々の機能があるが、氏いわく、女性化が一番面白かったという。

「出来の良い写真をTwitterに投稿するようになって、どんどんハマっていきました」

 元々女装願望や女装の経験もなかったというが、何が彼をそこまで熱中させるのだろうか。記者は自ら体験することでその魅力に迫ることにした。