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「メイクに対してポジティブではなく、戸惑いを感じつつも、ちゃんと自分からメイクに挑戦しようと葛藤している男性をずっと探していたんですよ。メンズメイクは世間的に流行ってきていると言われるわりに、メイクに関心が高い“若くて美意識が高い男の子”と、全く関心のない“普通の男性”とで二極化していると思っていて。でも鎌塚さんはそのちょうど中間の存在だったんです。『メイクの知識があるわけではないのに興味は津々という男性が、急に彗星のごとく現れた!』と、編集部でザワザワしました」

 すぐにVoCE編集部は鎌塚氏にメイク体験記の連載をオファー。noteへの投稿からわずか1カ月後の2020年8月に『メンズメイク入門』の連載が始まった。

僕はメイクすることにした

「孤独のコスメ」ツイートに男性から反響

 漫画化の案も、鎌塚氏の連載開始当初から編集部内では出ていたというが、漫画化の決定打となったのは鎌塚氏のあるツイートがバズったことだ。

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「連載を開始してから、Twitterでボソッと『孤独のグルメ』とか『さぼリーマン甘太朗』みたいな中高年男性が趣味を楽しむ漫画が流行っているけれども、『孤独のコスメ』みたいなのがあったら面白いんじゃないかなどとつぶやいたことがあって。それが数百リツイート、数千いいねがつく大反響となったんですよ。しかも、『男らしくない』など、批判的な声もあるだろうと恐れていたら、ネガティブなものはほとんどなく、VoCEさんと『これはもう行くしかないですね』となりました」(鎌塚氏)

 男性からも「面白そう」「メイクに興味があるけども、何から始めたらいいかわからない。漫画でぜひ読みたい」という声が寄せられたという。このTwitterでのポジティブな大反響もあって、漫画化の話がトントン拍子で進んだ。

コスメが大好きな女性「タマちゃん」を師匠と仰ぎ…

 そこで白羽の矢が立ったのが女性漫画家の糸井のぞ氏。糸井氏によると、漫画の主人公・前田一朗の設定は、「会社の隣の席にいそうで、汚いわけでも綺麗なわけでもない平凡な人で、かつ素直な人」だ。

©糸井のぞ・鎌塚亮/講談社

 物語はソファで缶ビールを空けながら寝落ちするという、不摂生な主人公の生活の描写から始まる。ある朝、鏡の前に立った一郎は、目の下の濃いクマ、テカる額に乾燥した肌、たるんだおなか回りといった「紛れもない今の俺」にショックを受ける。「このままじゃダメだ」と一念発起した彼は翌日ドラッグストアの化粧品コーナーで化粧水を購入。翌朝、肌が潤っていることに感動してスキンケアの心地よさを知る。

 数日後、今度は洗顔料の購入を試みる一朗だったが、あまりの商品の多さに戸惑ってしまう。そこに偶然居合わせたのがコスメが大好きな女性「タマちゃん」だ。一朗はタマちゃんを「師匠」と仰ぎ、徐々にメイクの面白さを知っていくのである。