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がん患者が「本当に読みたい記事」ってなんだろう?――「がん100人委員会」編集会議

2017/12/27
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「いい患者会ランキング」、「いい患者会アワード」

岩城 マギーズ東京には、全国から来訪者がいらっしゃるんですけど、全国47都道府県のおすすめの場所みたいな記事があれば、普段は自宅近くの場所に行って、時々マギーズ東京にも足を運ぶ、みたいに選択肢も増えるのでは?

鈴木 「いい患者会ランキング」みたいにして、「いい患者会アワード」みたいな表彰制度があっても面白そう! あと、これは匿名座談会でもいいので、「患者会あるある」みたいなぶっちゃけ話も読みたくないですか? 

 というのは、私は最初患者会に行って、ものすごく傷ついた経験があるから。あの頃の乳がんの患者会は圧倒的に50〜60代の方が多くて、若くても40代。私みたいに24歳の乳がん患者はいなかった。そこで「若いのにかわいそう」「親より先に死んじゃダメよ」とかいろいろ言われ傷ついて、もう二度と行くもんか! って誓ったくらいです。そういうこともあるって事前に分かっていたら、ちょっと心強いかも。

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坂本 私が患者会に行けなかったのは「私の気持ちなんて、どうせ誰にも分からない」って思っていたから。マギーズ東京に来るようになっても、1年くらいは誰の名前も覚えられなかったし、覚えようという気にもならなかった。それがようやく、最近顔と名前が一致し、ここがあってよかったなと思えるようになった。私にとっては、ありがたい場所です。

坂本恭子さん(仮名)

年齢も、やっていることも違う王監督の本にすごく励まされた

吉川 それでもまだ外に出られない人には、励まされた本のリストとかあるといいのかな。僕自身、実は引きこもっていた時に、王監督の本(『野球にときめいて―王貞治、半生を語る』王貞治/中央公論新社)にすごく励まされたので。年齢も、やっていることも才能も違うし、しかも「半生を語る」と言いながら、内容の9割が野球の話なんだけど、痩せた体で野球教室をしていたエピソードとかを読んで、希望というか糧をもらったというか。

熊倉 私は、メンタルサポートを受けていた医師に薦められて読んだ『がんに効く生活 克服した医師の自分でできる「統合医療」』(ダヴィド・S. シュレベール/NHK出版)という本に励まされた。読みながら泣いちゃうんだけど、その「泣ける」っていうのがその時の私にはすごくよかったです。

鈴木 そういう、がん体験者の「この本で元気をもらった」とかいいですね。みんな個々にあると思うので、本じゃなくても、映画とか、テレビで紹介された人とか、言葉とか。

 

坂本 私はまだ気持ちの整理がつかなくて、自分では「こういうのに励まされた」というのはないんですけど、ほかの人のは読みたいな。そういうのがたくさんあればあるほど、自分にあてはめられる選択肢も増えますもんね。

斉藤 僕は、この病気とのつきあいが今始まったばかりという感じなんですけど、同じように頑張っている人の闘病記というか、闘病中だけど元気な姿とかあったら見てみたい。

岩城 来訪者の方からは、等身大のがん経験者が輝いているのを見ると勇気づけられるという話をよく聞きます。マギーズ東京で『HUG(ハグ)』という雑誌を年1回発行しているんですが、その巻頭で有名人・一般人関係なく、かっこいい写真とインタビュー記事で、がん経験者にご登場いただいているのが、すごく好評で。

鈴木 「私も出たい」と話題になるくらい、かっこいいサイトがあったらいいよね。「え、がん経験者じゃないの? じゃあ、出られなくて残念だね」みたいに広がっていったらよさそう。