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「佐藤の銀が止まらない」観る将ファンが選んだ2021年度のベストシーンとは

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観る将アワード2021/2022 レポート #2

2022/05/21
note

オチをつける木村一基九段、明朗な渡辺明名人…

――2位になった木村一基九段、渡辺明名人、深浦康市九段、郷田真隆九段の特徴はどういうところにあると思いますか?

遠山 木村一基九段の解説って笑っちゃうといった感じがありますが、解説している手の内容は高度なんですよ。そこまで説明するんだというくらい難しいこともあるんですが、最後にオチをつけるんですよね。手がわからなくても、楽しく見られるところが木村スタイル。

深浦 できないよねぇ。

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遠山 将棋のことを考えながら、オチも考えているはずですから、どうやってるんでしょうね。

深浦 彼は大学時代、落研だったんですよね。

遠山 そうらしいですね。そういうオチをつけるのが上手なんですよね。

――渡辺名人の解説はどうですか?

遠山 明朗ですよね。

深浦 ついつい丁寧に話しちゃうのですが、みんなを惹きつけちゃうあのフランクさは、真似できないですよね。

――深浦先生が解説のときに気をつけていることはなんですか?

深浦 自分は逆に丁寧にやろうと思っています。わからない方にも、今、どういう状況か知ってもらおうとことば数は多くなりますよね。

©石川啓次/文藝春秋

――郷田先生は、どういう解説ですか?

遠山 郷田九段は、ことばがいいですよね。

――名言が多いですよね。ひとつコメントご紹介します。

 郷田先生の解説はいつも将棋への愛と棋士への敬意にあふれています。A級順位戦最終局・豊島-菅井戦の解説時も、深夜になり勝負の行方が混沌としてくると「ひぇー!」を連発、最後には「自分もこうした熱戦を指したい」。先生たちの熱い解説のおかげで、深夜3時過ぎに及ぶ対局を最後まで見届けることができました。生放送ではありませんが、ABEMA師弟トーナメント決勝の中川大輔八段の解説もサイコーでした!(48歳/女性)

遠山 印象的なことばを言われるんですよね。ツイッターに書けば、バッと広がりそうな刺さることばを上手に話されるのが印象的です。

――深浦先生は、郷田先生とABEMAトーナメントでチームメイトでしたが、どういう先生ですか?

深浦 菅井さんがチーム名を「一刀流」と名付けたのですが、その通りでまさにサムライです。解説時にもそれが現れていて、自分が対局者だったらこの手の意味をどう捉えるかという視点で見ているので他の人に媚びない。郷田真隆の解説ですね。

――よく「格調高い」と形容されます。

深浦 郷田さんと同じチームになると、格調低い手は指せないですよね(笑)。

――さて、どうやって決めましょうか。昨年度、高見先生をこの賞に選んでいるので、別の方にあげたいという気もしますよね。

遠山 これかなり難題ですね。

深浦 ここに挙がってないけど、票を集めた人はたくさんいるんですよね。

遠山 調べてみると2位に1票差の人も何人かおられて、たとえば中村太地さんとか、井出隼平さんとか金井恒太さん。