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銀座で3000万円台、厚すぎる床…“失われたデフレ時代”のすごいマンション

銀座で3000万円台、厚すぎる床…“失われたデフレ時代”のすごいマンション

伝説マンションBEST45 第7回・1990年代「デフレ時代のレジェンド」編

2022/06/26
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43 パティオス1番街~6番街(1994~2001年/JVプロジェクト)

 パティオスは千葉県の所有地に賃借権を設置して1994年6月に分譲された大型JV作品群である。最終的には2001年まで分譲が続くプロジェクトで、この1番街~6番街で、同じ面積の敷地を使って、それぞれJVが商品企画力を競うように分譲されている。

パティオス3番街の外観写真(2005年7月撮影)

 この様はまるで住宅展示イベントのようにも映ったし、人気投票をしているようにも見えた。すべての敷地が5645㎡で、建蔽率は若干違いがあるが、容積率300%の同一条件。6街区の建物はすべて高さをそろえ街並みの統一感を出している。

 その名の通り、すべての街区が「ロの字」の建物を有しており、それぞれ特色のある中庭を持っている。4番街だけが7階建てだが他はすべて6階建てである。

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 各街区の売主と施工主は、以下の通りである。

【1番街】

売主:三菱地所、住友不動産、東急不動産、新日本製鐵、東日本旅客鉄道

施工:竹中工務店、奥村組、新日本製鐵
【2番街】

売主:幕張シティ

施工:フジタ
【3番街】

売主:三井不動産、三井物産、鹿島建設

施工:鹿島建設、京成建設、三井建設
【4番街】

売主:丸紅、東京建物、大成建設、大和ハウス工業

施工:大成建設、旭建設
【5番街】

売主:野村不動産、川崎製鉄、松下興産、住友商事、東方不動産開発、亀田開発

施工:大林組、新日本建設、熊谷組、戸田建設
【6番街】

売主:清水建設、興和不動産、第一ホテルエンタープライズ、日本新都市開発 

施工:清水建設

 明確なコンセプトを持って、日本の名だたるデベロッパーとゼネコンが競い合った6つの独立したマンションだ。分譲時の価格もほぼ同じだ。坪単価は204万円程度に設定されている。

 私は自ら希望してこの6街区の見学会に参加したが、とりわけ注目したのが6番街であった。パンフレットを見てまず驚いたのが、当時150㎜が一般的であったスラブ厚がこの6番街では350㎜になっていることである。

パティオス6番街のイメージパンフレットより。スラブ厚350㎜には、当時強い衝撃を受けた

 スラブの厚さを2倍以上にすればコンクリートの量もかなり多くなって、当然ながら建築コストが上がる。さらに建物全体が重くなるから建築構造も堅牢さがより求められる。しかし、当時大きな問題になっていた共同住宅における騒音問題を「力でねじ伏せにいった」と私は感じた。「清水建設の答えはこれだ」という主張のように感じられたのだ。

 その後、6つの中庭(パティオ)がどのように変化していくかという点においても、多くの学びのある物件ではなかったか。