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 東お多福山は姿のよい前衛峰だけれどパスして、林道の峠から蛇谷北山への稜線の道に入った。ここも雑木林でマツが目立ち、足もとはササだが、道はよく踏まれて歩きよい。

 休日のせいもあって何組かのハイカーが前後にいた。天気はあまりよくないのに何か明るい印象で、この明るさも六甲の人気の因(もと)だね、などと話しながら行くうちに日がかげったと思ったら、雪が舞い始めた。

 蛇谷北山と地図にあるピークに達した頃にはかなりの雪で、北面を下るところでは数センチの積雪があり、滑らないように注意した。

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 とはいっても再び登るところでは積雪はなく、登りつめて鳥居のある分岐に着いた頃には雪も止んだ。これが六甲山縦走路で、「白山之宮」という合祀神社があり、ひと組のハイカーが昼食の最中だった。

山頂の半分は「立入り禁止」に

 ここからは車道がらみの縦走路で、観光地の低山ではよくあることだが、ハイキング気分は損なわれる。そこで車道部分はできるだけ足早に通り過ぎ、あっという問に六甲山の最高地点に着いた。

 山頂は正しく半分に区切られて、立入り禁止の半分は米空軍の通信施設になっていた。

蛇谷北山への登路から見る六甲山最高点。巨大なパラボラアンテナ群は米空軍の通信施設のものである。©小林泰彦/文藝春秋

 折から薄日がさしてきたが、何しろ風が強いので昼食はあとにして、早々に下山と決めた。下山路は縦走路を戻り、「白山之宮」からとかが尾山コースヘ入り、車道のコンクリート壁をまたいで稜線の道を辿った。

 暖地らしいアセビのジャングルを抜けて、ササを分け、アカマツの大木の下を通って、山頂のないとかが尾山から南へ急下降である。山火事用の消火栓が自然林の中に点々とあって、管理のよいところだと思った。

 下りきって車道に出たら、そのあたりは奥池を中心とするリゾートで、新興別荘地とみえてモダンかつ珍奇な建物があり、こんなのは関西らしいね、などと話しながら歩くうちに、出発点に戻った。(1994年冬)