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その3、開聞岳(鹿児島県・薩摩半島)
初めて開聞岳を見たのは、鹿児島から屋久島へ向かう汽船のデッキからだった。シンプルな円錐型の山容が珍しくおもしろく、海からいきなり立ち上がるロケーションも不思議だと思い、強い印象を受けた。そのときは屋久島の宮之浦岳、永田岳に登ったのだが、鹿児島に戻る船上からもういちど開聞岳を眺めた。
のちに、開聞の名は「海門(かいもん)」からきていると何かで読んだときに、ほんとうにその通りだと思った。それから30年も経って、ようやく開聞岳に登ることができた。
3月の末というと、このあたりでは桜はとうに散り、新緑の候と言ってよい。けれども落葉樹は少なく、濃い緑の常緑広葉樹が多いので、東日本の山とはずいぶん違い、黒々とした緑である。
開聞岳に登るには、JR指宿枕崎線を利用した場合は開聞駅で降り、目の前にそびえる開聞岳に向かってまっすぐに登っていくのだが、この日のぼくらは車を使っていたので無精をきめ、東麓の自然公園から上がって3合目の駐車場を出発点にした。
天気は高曇りで雨の心配はなさそうに思えたが、遠い景色は霞んでいる。関東なら5月後半ごろにあたる滴るような緑の中を行くと、駅から登ってきた登山道に出合った。
エキゾチックな森林、伝説の巨大生物
つる植物の多い森林は亜熱帯のジャングルのようで、九州の山が珍しいぼくらにとってはかなりエキゾチックだ。トリの種類が多いが、これもなじみのトリたちとは違うようだ。シダに囲まれた溝状の道は、雨が降れば水路になるのだろう。