ケース3:ギフテッドかも!?
タクマ(仮名)はとうとう学校から通院を促された。薬の服用も相談してほしいと。
しかたなく、病院に行った。すると母親の智子(仮名)は思いもよらぬことを聞かされた。
「たぶん、ギフテッド(突出した才能をもつひと)だと思います。医療じゃなくて、ギフテッド教育を受けさせたほうがいい。お薬も不要です。ギフテッドを扱う病院を紹介します」
〈まさか!〉
思い返せば、幼少期からちょっと変わっていた。ひと言でいえば、知的な部分では異様に早熟だった。
幼稚園の年長さんくらいになると、歴史に興味をもち始めた。あっという間に日本の歴史はほぼ頭に入ってしまった。日本刀や元素にも興味をもった。あらゆるジャンルの知識を、次から次へと吸収していった。
医師の見解を受けて、智子はギフテッドに関する書籍に片っ端から手を伸ばした。紹介された病院に行くころには、ギフテッドについてのちょっとした専門家になっていた。パズルのピースがバーッとはまっていくように、すべてのことが符合した。
改めて学校での学習活動とタクマの特性を照らし合わせてみると、学校での学習活動のほとんどが、タクマにとっては不快でしかないことがはっきりした。やり方さえ違えば、タクマにとって学びは快であることもわかっていた。
つまるところ、学校にいることは、タクマにとっては学びの邪魔でしかない。
学校との面談で、校長から「タクマくんがギフテッドだとしても、学校としてできることには限界があります。ご家庭でやれたら、そうしたほうがいいかもしれない」と言ってもらえた。教室を覗くと、タクマの目は完全に死んでいた。
それを見て、決心がついた。
家に帰ってタクマに話した。
「もうやめようか、学校」
そのときタクマからこぼれたひと言が忘れられない。
「はぁ、息ができる」
親子の気持ちが固まった。
〈もう学校には行かない〉