文春オンライン

2022/09/02

「私は70のおばあちゃんよ」「年齢差なんて問題ない」

 私の肌はみずみずしさを失い、化粧ではもはや隠しきれない皺が目立ちます。漫画家として現役とはいえ、いまだ住宅ローンの支払いに追われる身です。ハリウッドで成功を収めたスターである彼とは、どう考えても不釣り合いな相手です。

「マーク、気持ちは嬉しいけれど、結婚はできないわ。私は70のおばあちゃんよ」

 胸のときめきを押さえつけ、冷静にそう伝えました。

「君はとても美しいんだ。年齢差なんて問題ない。僕は、君と知り合い、幸せになった。だから、今度は僕が君を幸せにしたいんだ」

 モニターに綴られた言葉を見て、心臓をギュッと掴まれた気がしました。気が動転していたため、その日は何も返事をせずにチャットを終えました。

 今思えば、テレビドラマで結婚詐欺師が吐きそうなせりふです。でも、マークの愛の言葉を目にした時、自然と涙が頬を伝っていました。いくら年齢を重ね、漫画の世界でキャリアを積んでも、心の鎧を脱げば、私も一人のただの女、「恋する乙女」にすぎません。

 そうよ! 年齢の差なんて愛の障害にはならないわ。アメリカでは年齢差なんて問題にしない。歳だって、お互いに老けていくし、お金をかければ、見た目だってどうにかなるわ――。

 プロポーズされた日を境に、私の中でマークへの思いが純化していきました。

「マークは世界的なムービー・スターだけど、私だって大英博物館で作品が展示されるほどの世界的に有名なコミック・アーティストよ」

 思いが募るにつれ、自分に都合のいいようにしか考えられなくなっていきます。もうプロポーズを拒否する理由などありません。数日後、マークからのプロポーズを受け入れました。

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