文春オンライン

2022/09/02

「それは大変! もちろん貸すわ」

 私は、なんの疑いもなく、そう返事をしました。すると「ありがとう、ハニー」という言葉とともに、すぐに振込先情報が送られてきました。なお、詐欺に悪用された被害者がいる可能性も否定できないので、この先を含め、口座名義は一部、伏せ字にしています。

Name:Andrew*****

Zip code:46215

City:Indianapolis

State:Indiana

Country:USA

 振込先口座の名義はマークではなく、「アンドリュー(Andrew)」、住所はアメリカのインディアナ州インディアナポリス市でした。

 名義が違うことの説明はありませんでしたが、「自分の口座を裁判所にチェックされているから、知人の口座を借りているのかな」と解釈したので、特に気にはなりませんでした。金額は1100ドル、振り込み手数料などを含めると日本円にして14万円弱でした。大した額ではありません。

 それ以上に、愛する人からの頼まれごとです。私を頼ってくれたことが、なにより嬉しかったのです。マークなら、マネージャーだって何人もいるでしょうし、お金持ちの友人だってたくさんいるはずです。それなのに、わざわざ私を選んで頼んでくれた――その時は、本気でそう思っていました。

「お金を貸したのに、私の心は幸せでいっぱいでした」

 お金は、海外送金サービスの「マネーグラム」を使って送金しました。マネーグラムで送金するためには、代理店がある大阪までわざわざ出向く必要がありました。でも、それすらも「愛する人に頼まれた」からと、むしろうきうきした気持ちで電車に乗り込んだことを覚えています。

 マーク「10月18日には返すよ。個人口座の凍結が外されるからね」

 チカエ「ええ、いつでもかまわないわ」

 お金を貸したのに、私の心は幸せでいっぱいでした。

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