アクワイアラーであったとされる三井住友カードも業界的に事態正常化に努力をし、誠実に対応したようですが、FANZA側としても決済拒否にいたったコンテンツの特定がむつかしいのであればどうしようもありません。
他方で、Mastercardが決済拒否に至る線引きを明示しない理由として、やはり決済できるできないのギリギリを突いてくる業者からの挑戦を招くことは控えたいのも事実です。冒頭の利用規約を巡る解釈と、現行の国内取引の問題は非常にデリケートなところまで来てしまっていると思わせる一件でした。
カード会社が共同被告になるという衝撃
それと並行して、アメリカ・カリフォルニア州でこの界隈が震撼する裁判が勃発しました。国際的なアダルトコンテンツ大手で、ユーザーからの動画投稿も受け付けているポルノサイト『Pornhub(ポルノハブ)』に対して、その広告やユーザーからの月額課金を扱う関連会社ともども児童ポルノの投稿に対する被害救済をすべきという巨額訴訟の共同被告として、なんとVISAも巻き込まれたという事件です。
要は、児童ポルノや私怨によるリベンジポルノを掲載したポルノハブへの名誉毀損や損害賠償の裁判において、その経営を支えている広告会社や会員からの資金決済をみだりに仲介したVISAなどカードブランドも問題だと共同被告に加える申請が原告からあったのです。VISAも「そんなわけねえだろ」と抗弁したものの、カリフォルニア州の判事が「VISAも加担したと認定するでやんす」と認めてしまった一件です。
いままでは、どちらかというと広告会社が海賊版サイトや違法コンテンツ販売サイトの片棒を担いでいるとして制裁の対象になることはあっても、月額課金など表面上問題のないサービスの決済を担ったカード会社が共同被告となることはありませんでした。むしろ、カード会社はどちらかというと「必ずしもそのサービスのすべてを知って決済したとは言えない」という観点から聖域のように扱われてきただけに衝撃的でした。
これが問題になると、決済開始当時は問題のないとされていた団体がカード決済で収益を現金化してきたのに、後から実はイランや北朝鮮のハッカー組織が深く関与した団体でしたということが露呈すると、決済したカード会社も後から「お前、何決済しとんねん」と槍玉に挙げられ、かなり面倒なことになりかねません。
このあたりから、表現規制とカード決済拒否の熱量が一気に上がっていき、ついには12月5日付で、一部のアクワイアラーに対してカード会社がコンテンツなども含めて不適切な商品やサービスの販売に対して厳格な取引制限を開始する(かもしれないよ)という通知を送ってくることになりました。ここで最初に問題となったのは、Mastercardからほぼ名指しで取引拒否の可能性を示唆されたアニメイト傘下のイラストサービスサイト大手のpixivです。