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対応を一歩間違えると、表現の自由が委縮することになりかねない

 カード会社から特に問題だとされた内容は、通常会員でも検索ワードで閲覧できるコンテンツの中に、主に中国からのアクセスと見られる実在する児童の違法なポルノ動画・画像や、ガチの死体画像などです。pixivの検索結果から違法な販売サイトに誘導されるため、これらのコンテンツへのアクセスが問題視されたことで起きた制限であるとされます。しかし、内容は必ずしも明示されないため、pixiv側にも他にもいろいろ積み重なったものがあるのかもしれません。

 実際、pixivが展開しているBOOTHやFANBOX経由で、中華系サイトを中心に実在する男児ポルノサイトや死姦サイトへの誘導や販売があったことは視認されています。ここでpixivが対処を怠ると、かなり本格的にカード会社各社からの怒られが発生し、決済ごとではなく業者全体として、親会社アニメイトごとBANされるので大変なことになります。

 死体が好き、凌辱に興奮する、児童ポルノを愛するなどの、俗にいう異常性癖と表現規制の問題は非常にデリケートです。これらのサービスを通じて私人が個人的に楽しむものは問題ないとされていましたが、児童ポルノは日本法でも単純所持も含めて違法化されました。にもかかわらず、これらのサービスで実際の児童ポルノが価格表付きで詰め合わせコンテンツ販売サイトに誘導しているのは運営上の問題と言わざるを得ません。対応を一歩間違えると、表現の自由がそのまま決済BANにより委縮することになりかねないのです。

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pixivによる規約改定のお知らせ(pixiv公式サイトより)

FANZAの事例やpixivが怖れているのは…

 さらに、今後の問題点として、これらのアダルトコンテンツの流通に厳しいMastercardに続いて、JCBやVISAも追従する可能性が極めて高いことが挙げられます。また、一連のコンテンツ販売への決済拒否は、実在する人物に対する権利侵害だけでなく、イラストなど2次元も対象となりえます。

 前述規約でも、表現の内容については実在するかどうかは問われていませんし、イラストやゲーム動画なども権利侵害を疑わせるものであれば制限が可能な留保がついているというのが、一般的な法務的な読み取り方となります。

 実際、19年以降断続的に起きていたコンテンツ決済拒否では、R-18指定ではないアニメすら問題商品であったと認識されています。

 FANZAやpixivの事例が典型的ですが、日本のコンテンツ販売者やウェブサービス会社がこれらの問題を怖れるのは、VISAなど他のカードブランドの決済も閉じられるだけでなく、単体の商品に対する決済拒否に加えて、事業者全体、資本グループ全体への決済拒否(業者BAN)に広がる可能性です。これは、特に性的コンテンツの制作・販売を含む事業者(性風俗産業:Sex Industry)が人身売買を含む犯罪組織・反社会的勢力との関係があると蓋然的に判断される場合には、国内法の犯罪収益移転防止法だけでなく、国際的なアンチマネーロンダリングの枠組みとして、カード会社が犯罪収益に繋がる行動を防がなければならないという問題(FATF対応)につながります。