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2003年の日本

「金のことだけを考えたくねえなって」と木村拓哉(50)が語ったことも…SMAP最大のヒット曲の陰にあった“賛否両論”

「金のことだけを考えたくねえなって」と木村拓哉(50)が語ったことも…SMAP最大のヒット曲の陰にあった“賛否両論”

2023/01/01
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 ちなみに発言中の「バケツの中にいても~」とのたとえは、「世界に一つだけの花」で木村が一番好きだと言う「バケツの中誇らしげに しゃんと胸を張っている」というフレーズを踏まえたものだ。こうしたメンバーの姿勢を、世の多くの人たちもメディアを通じて感じ取っていたからこそ、この曲を違和感なく受け入れたのではないだろうか。

歌詞が賛否両論を呼んだわけ

 平成のヒット曲のなかでも「世界に一つだけの花」ほど賛否両論を呼び、語られた曲もないだろう。折しもシングル発売の直後にイラク戦争が勃発するのと前後して、反戦歌とも受け取られることになる。最初にそう扱ったのは、TBS系の報道番組『ニュース23』だとされる。

©文藝春秋

 同番組では、すでにアメリカがイラク攻撃の秒読み段階に入っていた2003年2月にSMAPがゲスト出演し、この歌を生で披露した。このときキャスターの筑紫哲也が同曲を「反戦歌」と規定したというので、波紋が広がった。ただ、筑紫本人は雑誌のコラムで、《私はそんなことを言っていない。/「そう取られる部分もあるが、もっと幅の広い内容の作品だと思う」という言い方で、「反戦歌」として閉じ込めるのにはむしろ否定的なつもりだった》と反論している(『週刊金曜日』2004年2月27日号)。

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 先述した紅白でのSMAPのメンバーによるメッセージも、イラク戦争を念頭に置いてのものだったことは間違いない。しかし、彼らは声高に反戦を唱えるのではなく、あくまで人々がそれぞれ自分にいま何ができるのかと考えることを訴えた。

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 槇原敬之もまた、この曲を反戦歌と呼ばれたことについて語るなかで、《反戦というと、どこか戦争に反対っていう響きだけが強くて、どうやって平和を広めるのっていうところがないような気がする》と断ったうえで、《その意味で、忘れちゃいけないのが普段の生活の中で、意見の違う友人、立場の異なる同僚、わかりあってない家族の中で、調和をはかっていく努力。「それってどういうこと?」って具合に、聞く耳をもつ落ち着き。平和もそうした日々の積み重ね、僕たちの営みの延長線上にあると思う》と話している(『AERA』臨時増刊2004年8月5日号)。