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藤井聡太が“32歳差”羽生善治に王将戦七番勝負で先勝! 過去の「年齢差タイトル戦」を調べてみると…

藤井聡太が“32歳差”羽生善治に王将戦七番勝負で先勝! 過去の「年齢差タイトル戦」を調べてみると…

2023/01/11
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 王将失冠後の大山はさすがにタイトル奪取には至らなかったが、その後もタイトル挑戦は果たしている。例えば、米長に奪われた王将戦の時は、ほぼ並行して行われた棋王戦で米長に挑戦していた。

『果たせぬ夢と笑われても』63歳の名人挑戦

 そして大山が63歳を迎えた1986年。なんと名人戦七番勝負に挑戦者として登場する。60歳を超えて挑戦はおろか、A級で勝ち越したのは順位戦草創期の土居市太郎を除くと、大山しかいない。

 さすがに中原との七番勝負は1勝4敗で敗れたが、63歳の名人挑戦は今後に起こり得るとは思えない。大山はこのシリーズについて、

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 私がいくら大先輩といっても、「六十三歳の実年棋士に名人位は譲れない」という気構えの中原名人には「ご立派」の一言しかない。

 だが、私は全く降参しているわけではない。トップクラスの席を譲る気持ちも、毛頭ない。まだまだがんばり続けて、名人への挑戦を目指している。果たせぬ夢と笑われても、この張り合いをなくしたら、勝負師としての生命は終わりになってしまう(大山康晴著 「昭和将棋史」より)

 と書いている。

 大山が最後にタイトルへ挑戦したのが、1990年の第15期棋王戦だ。挑戦者決定トーナメントでは初タイトルの竜王を取る直前の羽生を負かして、南芳一棋王への挑戦権を獲得。なんと66歳でのタイトル挑戦である。もちろん史上最高齢のタイトル挑戦であり、南との年齢差40も、タイトル戦で実現したカードとしては最大年齢差である。今回の藤井―羽生戦は、これに次ぐ年齢さだ。

タイトル獲得通算100期がかかる羽生善治九段 写真提供:日本将棋連盟

 なお、年齢差20以上で実現したタイトル戦の組み合わせは、以下の通りである(年齢差順、年齢は初顔合わせのタイトル戦第1局時の数字)。

大山康晴(66歳11ヵ月)―南芳一(26歳8ヵ月)  第15期棋王戦

羽生善治(52歳3ヵ月)―藤井聡太(20歳5ヵ月)  第72期王将戦

木村一基(47歳0ヵ月)―藤井聡太(17歳11ヵ月)  第61期王位戦

米長邦雄(50歳10ヵ月)―羽生善治(23歳6ヵ月)  第52期名人戦

大山康晴(53歳3ヵ月)―桐山清澄(28歳8ヵ月)  第28期棋聖戦

森雞二(49歳4ヵ月)―羽生善治(24歳11ヵ月)  第43期王座戦

大山康晴(45歳9ヵ月)―中原誠(21歳3ヵ月)  第13期棋聖戦など20回

中原誠(42歳3ヵ月)―屋敷伸之(17歳10ヵ月)  第55期棋聖戦など2回

大山康晴(54歳2ヵ月)―森雞二(31歳2ヵ月)  第30期棋聖戦

羽生善治(46歳8ヵ月)―斎藤慎太郎(24歳1ヵ月) 第88期棋聖戦

加藤一二三(43歳3ヵ月)―谷川浩司(21歳0ヵ月)  第41期名人戦

羽生善治(45歳8ヵ月)―永瀬拓矢(23歳9ヵ月) 第87期棋聖戦

羽生善治(46歳9ヵ月)―菅井竜也(25歳2ヵ月)  第58期王位戦

内藤國雄(43歳8ヵ月)―高橋道雄(23歳3ヵ月)  第24期王位戦

加藤一二三(44歳6ヵ月)―高橋道雄(24歳2ヵ月)  第25期王位戦など2回

大山康晴(47歳4ヵ月)―米長邦雄(27歳1ヵ月)  第11期王位戦など6回


太字は、年長者が番勝負を制したこともある組み合わせ