1ページ目から読む
11/12ページ目

 一同 (拍手)

 ――今回の5作以外にも、今年読まれた作品で「これは!」というものがあったかと思います。おすすめの本を伺えますでしょうか?

 礒部 私は砂原浩太朗さん『黛家の兄弟』(講談社)をおすすめしたいですね。昨年「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞した『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)に私も一票を投じたかった……という思いを込めて、砂原さんを推します。これからもずっと読んでいきたい作家さんの一人です。

ADVERTISEMENT

 阿久津 僕もこの賞に関連して言うと、蝉谷めぐ実さん『おんなの女房』(KADOKAWA)は外したくないですね。デビュー作『化け者心中』(KADOKAWA)で前回ノミネートされた際、「次回作に期待」と言ったので、ここで推薦させてください。

 そして北原亞以子さん『慶次郎縁側日記』シリーズが、朝日文庫から新装版で復刊されています。新潮文庫でのシリーズには入っていなかった『雪の夜のあと』まで収録されているんです。長編作品なのですが、シリーズ第1話と第2話をつなぐ役割を果たしています。この話があることで、慶次郎の性格の移り変わりがよりわかりやすくなっていますね。これまでずっと読んできた方にも、改めて読んでいただきたいということで、おすすめです。

 平井 私は、今回の選考会で読んだ『広重ぶるう』がきっかけで梶さんを追いかけるようになりました。中でも、先ほどお話に上がりましたが、浮世絵の摺師を主人公にした小説が、ハルキ文庫から「摺師安次郎人情暦」シリーズとして出ていておすすめです。

 それから、「オール讀物新人賞」を取られた由原かのんさんのデビュー作『首ざむらい』も注目の1冊です。11月末発売の新刊です。「謎解きの怪異譚」という紹介文を読んで、「私の好み!」と思いました。「癒し系時代奇譚」とも書いてあってどんなジャンルなんだろうかと楽しみにしています。表紙には、「オール讀物」掲載時の扉絵になった首を持ったお侍さんがかわいらしいキャラクターっぽく描かれていて、すごく気になっていたんです。絶対に読みたい1冊です。