たぶん最初に職がなくなったのは債券トレーダー
なので、百科事典(Wikipediaではなく)のようないわゆる常識(コモンセンス)を基準として、そこから人間社会が共通として知っているべきものや、ネットでふんだんに情報量が展開されている分野についてであれば、人工知能は問いかけに対して一定以上のクオリティで回答してくれるサービスが出てきた、というだけなのが現状ではないかと思います。
AIが萌え絵のイラストの自動組成を相応のクオリティでできるのも、ストレートニュースの記事をそれっぽく量産できるのも、ひとえに情報がいっぱいあって、普遍的に参照可能だからにすぎません。
これらのAIがどんどん発展することで、人間の仕事が奪われる、みたいな言論が出るのも、人にとって分かりやすいサービスが出たことで当然湧き起こる議論だろうと思います。
ただ、投資の世界ではすでに一般的な投資判断においてAIを使わないファンドはもはやないと言ってもおかしくないぐらい利用されています。たぶん、人工知能で一番最初に職がなくなったのは債券トレーダーなんじゃないかと思います。そして、次に仕事がなくなるか、役割が大きく変わる職業は薬剤師や教師でしょう。基本的に、一定の知識を持って繰り返し状況に応じて判断を繰り返す機械的な仕事ほど、AIに置き換えられていくことになります。
債券や株式、為替などのトレーダーの件で言えば、ふんだんに過去の情報が参照できるということは、その相場が、どの局面で好材料と判断されて値上がりしたかや、何が悪材料として売り込まれたのかを学習しているということです。精度がどんどん上がるだけでなく、これがトレーディングシステムと直結したので、何かが報道されると人間よりも早くその記事に目を通し、重要度を判断し、これが売り材料なのか買いなのかを判定して、ほぼ光の速さで売り注文や買い注文を出すことができるのです。人間には勝てっこありません。
これらの競合は職業として相場に長年携わった人たちであり、デイトレーダーです。証券でもFX・為替でも商品相場でも債券でも、公式な情報を元に売買するファンドで人が出る幕はかなり減り、結果として、AIを使わない投資家は売買機会が多ければ多いほど負けることになるのです。
人工知能にできない分野の価値は上がっていく
言語モデルによる衝撃は大きく、一般的な教師や、経理などの事務職などの仕事はなくなるのではないかと危機感を煽る記事が出るのも当然のことで、これはこれで、おそらくは世界はそういう方向に向かっていく面はあるのでしょう。
しかしながら、人工知能の発展にともなって人間社会が変化し、価値のある仕事の定義が変わるというのは当然のことです。人工知能は過去のデータが将来もそのまま発生する前提(線形である)であり、参照できる情報量の乏しい分野では“量産型ひろゆき”状態になるわけですから、なんのことはない、人工知能にできない分野に従事する人たちの価値が上がっていくだけのことでしょう。
確かに単純な電話オペレーターの仕事は減るかもしれないし、決められた手順で実施すれば仕事が進む経理などは人工知能に代替されますと言われればそれはそうなのでしょうが、より専門性が求められる仕事で、人工知能が価値の判断のできない込み入った情報を扱うものについては特に、人間が携わる仕事としての価値は上がっていきます。